Mike Campbell e-mail interview (2010/4)

誕生日プレゼントに贈ったギターがきっかけとなって、ここに Mike Campbell 本人へのインタビューが実現しました。いろいろと(嬉しい)驚きの展開に「天にも昇るような」というのでしょうか… 長年サイトを運営してきて今回はあまりにも素敵なご褒美をいただいたような気分です。多くの Tom Petty and the Heartbeakers ファンのみなさんに、ご覧になっていただけたら何よりも嬉しいです。

質問は以下の5つのトピックに分類しました。

  1.  The Live Anthology
  2.  New album/tour
  3.  Guitars
  4.  In-depths
  5.  Miscellaneous

< Introduction >

HBJP: ハッピーバースデイ、Mike! プレゼントのギターを気に入ってくれたと聞いて、すごく嬉しいです。
まず最初に是非ともお聞きしたいのですが、贈ったGuyatone はあなたの最初のエレクトリック・ギターと同じものでしたか? そのギターの感想や想い出などがあれば教えてください。

Mike: ありがとう … これは父が買ってくれたギターにそっくりだよ。唯一の違いは、僕のはピックアップが2つだったこと。このギターを弾いていたら沢山の想い出がよみがえってきたよ。

これは、僕がギターの弾き方を覚えて、その後の数年間、演奏していた楽器なんだ。僕が今持っているもっと高いギターと比べても、とても良い音をしているよ。Fender Jaguar に似ているね。

1 The Live Anthology

『The Live Anthology』の選曲に際してはどのようなことが大変でしたか?ファンのみんなにはどんな点を聞いてもらいたいですか?

一番大変だったのは、飛び抜けているパフォーマンスを探すために、30年分以上におよぶライヴ演奏の音源を何時間も聴き続け、バンドの最高の演奏を表すような最終段階に絞りこんでいくことだった。そもそも、アナログで録音された音源を聴くことができる状態にするには、テープを焼いて(*)デジタル形式に変換しなきゃならなかったんだ。僕たちは、ヴォーカルが本当に良い場合はバンドも同じくらいに良いということに気づいたから、焦点を絞るためにまずはヴォーカルを聴いたんだ。

 *) アナログ・テープを文字通り加温処理して長期保管後の耐久性を改善する過程。

『The Live Anthology』の中であなたが一番気に入っている曲目は?

“Lost Without You” … あれはリハーサルなしで、完全に自然に沸き出たもので… とても感情豊かな演奏を捉えているよ。

『The Live Anthology』の選曲のために昔の音源を聴いてみて、どんな気分でしたか?Howie や Stan の参加している演奏を聴いて、心が痛む場面はありましたか?

Howie(の演奏)を聴くのはとても心が痛んだよ。そして、僕たちがいかに彼との友情や彼の才能を惜しんでいるのかということに気付かされたんだ。オリジナル・ドラマーの Stan が初期の曲ですごく良い音を出してたのは嬉しかったね。彼は、いつもエネルギーとインスピレーションの源だったよ。

全体的に、初期の頃のバンドがとても良い演奏をしているのには驚いたね。僕たちは年月とともに大きく成長したけど、初期の演奏もかなり際立っていたんだ。

『The Live Anthology』で個人的に一番嬉しかったのは、私(Mayu)が初めて TP&HB のコンサートを観た1997年の Fillmore の演奏が収録されていることです。それは、1月31日、2月1日、2月3日のショウで、最初の2日間は Roger McGuinn がゲストで共演しています。この夜のことを何か覚えていらっしゃいますか?

そのショウは最高だったよ。とても自由だったし、刺激的でもあったね。長い期間、何夜にもわたってそこで演奏したから、バンドはとてもタイトだったんだ。僕らは沢山のカヴァーとディープな曲を好きに演奏することもできた。一番の想い出は僕の誕生日(2月1日)に演奏したことだね。その日は全てのショウのうちでも最高の出来で、みんながこれ以上はないほどの演奏をしたんだ。

沢山のファンから曲やテイクの選択について、いろいろな要望が寄せられのではないかと思いますが、いかがでしたか?今回のアルバムに収録しきれなかったトラックで『The Live Anthology Part2』を発売しよう、なんていうプランはありますか?

「使い残した」曲があるとしてもごく僅かだね。僕たちは最高の演奏を全て収めるために最善を尽くしたから、「Part 2」を出すことはないと思う。でも、いつかは Fillmore ショウのベストを特別盤として出したいと本気で考えてるよ。素晴らしいパフォーマンスが沢山あって、それだけで(アルバムとして)成り立つからね。

コンサートを丸ごと収録したライヴ盤を発売していく予定はありますか?イタリアの雑誌のインタビュー記事では、Fillmore のライヴを発売することについて言及されているようですが…

ああ。(Yes)

2 New Album 『Mojo』 / Tour

レコーディングにはどれくらいの時間を費やしましたか?じっくりと時間をかけたのですか、あるいは迅速に進んだのですか?

新作『Mojo』は、曲を作る期間も含めて数ヶ月で仕上がったんだ。レコーディングは比較的早かったね。僕たちのクラブハウスでのライヴ演奏で、ダビングはごく僅かか、ほとんどなしだ。

オフィシャル・サイトでのアナウンスの中に『Mojo』を評して、TP&HBでもっとも「爽快な」作品とありました。アルバムに関するあなたの印象をもう少し詳しく教えていただけますか?また、アルバムの聴きどころを教えてください。

とても楽しかったよ。というのも、ヘッドフォンなしで「生」で演奏したからね。バンド全体がお互いのサウンドを聴いて即座に反応しあったんだ。ほとんどのヴォーカルと全てのギター・ソロは自然に出来たものなんだ。僕にとって、アルバムのハイライトは、”First Flash Of Freedom”と”Good Enough”だ。両方とも今までない程にギター・セクションを延ばしているし、バンドの最高の状態を捉えることができたからね。

今回の新作にはあなたの曲、または Tom とあなたの共作の曲はありますか?

共作は3曲あるんだ。”First Flash of Freedom”、”Good Enough”、そして “I Should Have Known It” だよ。

5月6日からサマーツアーが始まりますが、どんな気持ちですか?ツアーに向けてあなたが特にすることは何かありますか?

これまでの中で最高のツアーになることを期待しているよ。ツアーの前には、多分たっぷり寝るよ!!

サマーツアーでは新譜からは何曲くらい演奏したいですか?私たちを含め、多くのファンが、新曲や最近のショウではあまり演奏されていない曲が演奏されることを願っています。演奏されるセットリストはどうやって決まるのですか?Tom が決定するのでしょうか、あるいはもっと民主的な方法で選んでいるのでしょうか?もし可能であれば、私たちの意見も検討の際の参考にしていただけますか?

最終的には、Tom がセットリストの最終判断を下すんだ… シンガーとして、それが最善だと思うよ。当然ながら僕たちも意見を出すよ…(僕は人一倍言うけど!!) Tom は、最初にヒット曲をある程度演って、それから中間で新譜をたっぷり演奏して、最後にヒット曲をちょっと演りたいと言っていたね。僕もそれが良いと思ってるよ。

Tom は最近のインタビューでツアーよりもレコーディングに重点を置きたいと話しています。この点に関してはあなたも同意見ですか?もしそうでなければ、あなたにとっての中・長期的な目標はどんな感じでしょうか?

うーん、レコーディングは芸術作品として永遠に残るよね… 一方でライヴ・パフォーマンスは一瞬のものでやがて消えてしまう… だから、いろんな意味で、後に残したいのはレコーディングなんだ。だから、僕たちはレコーディングに最高の注意を払って情熱を傾ける。僕は彼に賛成するよ、でも僕たちふたりはライヴで演奏するのも大好きなんだ。いろいろな意味で、ライヴで演奏することによってスタジオで演奏するためのインスピレーションが生まれるのだから、どちらも重要だね。

3 Guitars

Mudcrutch の頃に使っていたギターは何ですか?

しばらくは Guyatone しか持ってなかった。次に Gibson Firebird、そして Fender Stratocaster だ。

Mudcrutch の再結成ツアーで、あなたはストリングベンダー付のブルーのテレキャスターだけを使用していましたね。あのギター1本にこだわったのはどうしてですか?

青じゃなくて白だよ。Tom にも勧められたんだけど、アルバムを特徴づけるために、あれ一本にしたんだ。それに、スティール・ギターっぽい音を出すためのストリング・ベンダーが付いているのは、あのギターだけだったからね。

あなたの使っている Rickenbacker の12弦ギターは、主弦と副弦の張り方が普通の Rickenbacker とは違うようですが、それはいつごろから、どのような理由からでしょうか?

単に、買ったときからそうなっていたんだ。何かが違っているなんて全然知らなかったよ。そのうちに気がついて、今ではもう一本は違った響きになるように、違う弦の張り方をしているよ。

Duesenberg のシグネチャーモデル製作はどのように進んだのですか?それに関してはどんな気分ですか?また製作にあたってリクエストした点などはありますか?

Duesenberg(社)の Nathan がコンサートにギターを持ってきて、そのままで気に入ったから、彼と契約をしたんだ。あのギターは好きなので、他のアーティストが使っているのを見ると誇りに思うよ。

他のギターメーカーであなたのギターを製作することに興味はありますか?例えば、Fender Custom Shop は Eric Clapton や David Gilmour など、様々なアーティストのシグネチャーモデルの復元製作に熱心です。彼らは、あなたが所有している名品の Broadcaster でオファーして来たりしませんか?

考えたこともなかったな。

あなたのギターのメンテナンスは今でも Alan “Bugs” Weidel がやっているのですか? 彼の存在は多くのファンの間ではよく知られており、熱心なファンは彼の話を直に聞いてみたいと願っています。彼がどんな人なのか教えてください。

Bugs は結成したときから一緒にいるんだ。彼は唯一無二の存在だ。非常に落ち着いていて、バンドに忠実なんだ。彼は他のローディーたちをうまく動かしているよ。

最近、特に探しているギターがあれば教えてください。また、あなたがギターを買う場合の基準があれば聞かせてください。

最近はあまり探していないんだ… 今、家の中にこれ以上ギターを置く場所もないし、欲しかったギターは大体持っているからね。「買おう」とする場合は、1960年代以前のヴィンテージ・ギター目当てだね。

4 In-depth

Tom はしばしば子供の頃のヒーローとして Elvis の話をしていますが、あなたの子供の頃のヒーローは誰でしたか?また、子供の頃にコンサートに行った想い出はありますか?

Elvis は僕にとってもヒーローだ。それから、Johnny Cash も。僕が子供だった頃、家の中で父が2人のレコードをかけていたよ。もちろん、彼らのギター・プレイヤーにはいつも注目していたよ、Scotty Moore と Luther Perkins だ。

他にも当時は数多くのヒーローがいたよ… George Harrison、Keith Richards、Jimi Hendrix、Jimmy Page、Mike Bloomfield … そんなたくさんの革新者たちからギターを学ぶことのできる素晴らしい時代だった。

今、あなたが一番興味あることを、音楽に関してとそれ以外に関して教えてください。また、最近手に入れたレコードで、良かったものがあれば教えてください。

新しいレコードにはあまり引きつけられないんだ。結局、J.J.Cale や Howlin’ Wolf など、昔のものを聴いているよ。最近の音楽の殆どは同じに聴こえてしまってね… 60年代のような飛びぬけたものがないんだ。でも、マリ出身の Tinariwen(*)というバンドは気に入っている… 彼らはなかなかカッコ良いよ。

*) ティナリウェン : 最新作 『アマン・イマン~水こそ命~』 (ライス・レコード B000N39HX0)

あなたにとって大切な Heartbreakers の曲を5つあげてください。
  • American Girl
  • Refugee
  • Here Comes My Girl
  • Runnin’ Down a Dream
  • The Waiting
私たちはあなたの Heartbreakers での活動だけでなく、他の様々なアーティストとの共演も楽しんでいます。あなたにとって特別な5つのセッションを教えてください。
  • Don Henley … ”Boys of Summer” ”Heart Of The Matter”
  • Johnny Cash … Rick Rubinとの録音
  • Taj Mahal … ”Lovin’ In My Baby’s Arms”
  • The Wallflowers … ”6th Avenue Heartache”
  • Bad Religion … Hills of LA (正確な曲名は “Los Angeles Is Burning”)
あなたにとって特に大切な5つのギターを教えてください。
  • Fender Broadcaster
  • Rickenbacker 12弦
  • Gibson Les Paul (ゴールドトップ)
  • Gretsch Clipper
  • Gibson Les Paul (59年製サンバースト)

5 Miscellaneous

ツアーやレコーディングがないオフのときはどんなことをして過ごしていますか?そういうときにも Tom や Heartbreakers のメンバーたちと会ったりするのですか?

Heartbreakers は仕事以外ではあまり付き合ってはいないんだ。時々、大晦日などには集まって過ごすことはあるけどね。それが長い間、お互いのことを好きでいられる理由の一つだよ!

僕は、いつもホームスタジオで作曲とレコーディングをしているよ。それと、僕のバンド The Dirty Knobs で小さな会場で演奏しているんだ。僕にとって家族は重要で、なるべく一緒の時間を過ごしているんだ。

ステージでの衣装は誰が選んでいるのですか?誰かが選んでいるとすれば、ガイドラインのようなものがあるのでしょうか? 服装に関する好みやこだわりを教えて下さい。

あるものを着るだけだよ… 独自のファッションと呼んでくれてもいいよ。誰かが(バレエの)チュチュで登場でもしない限り、服装を気にしたりはしないよ。

多くのファンは数年前にあなたの髪型が劇的に変化したことにビックリしました。髪型を変えたことに何か理由やきっかけがあったのでしょうか?また、バンドのメンバーの反応はどんなでしたか?

それっていわゆる「ドレッド」のことを聞いてるのかな?大したことはないんだ… 1年間くらい髪の毛をとかすのを止めたら、ああなったんだ… 手入れがあまり必要じゃないから気に入っているよ。

Mudcrutch の再結成ツアーによって、ギター演奏や精神的な部分に関して、どんな変化がありましたか?Mudcrutch でのさらなるアルバムやツアーを希望していますか?

昔の友だちと再会して、みんながとても気に入ってくれるような楽しいレコードを作れたことは最高だったよ… もし時間が許せば、是非とももう一枚作りたいね。昔のバンド仲間の Tom Leadon と一緒にギターを弾くことは感動的だった… お互い新しいことを教え合ったりしてね。

The Dirty Knobs での活動をカリフォルニアから広げていく予定はありますか?アルバムを制作する予定はありますか?また、日本からライヴのオファーがあったら来ていただけますか?

The Dirty Knobs はこの世の最大の秘密だからね!とても良いバンドで、みんな最高の奴で… エゴのない素晴らしいプレイヤーたちだ。

Heartbreakers で一緒に活動を続けている中では、The Dirty Knobs を大々的には宣伝したくないんだ… 他のメンバーたちもそれを分かってくれているから、僕たちは集まれるときに演奏して素晴らしい時間を過ごすんだ。僕にとっては観客たちの前で新しいことを試せる良い機会で、時にはそれが Heartbreakers の曲へつながるんだ。

あなたは1980年と1986年に来日していますが、その際の思い出があれば聞かせてください。また、今現在、日本に対して抱いている印象があれば、教えてください。

日本は大好きだよ… 僕の継母は沖縄出身なんだ。ファンのみなさんの親切さと熱心さ… そして素晴らしい文化を覚えてるよ。また日本に行くことができればと願っているよ…

日本のTP&HBファンに向けてメッセージをお願いします。

聴いてくれてありがとう … みんな大好きだよ。

2010年 4月 1日 掲載
インタビュー & 翻訳 : Shigeyan / TOSHI / Mayu