Steve Ferrone Interview (No.2)(2008/9)

GRETCH presents Steve Ferrone Drum Clinic(神田商会主催)のため、今年2月に続いて再度来日を果たした Steve。今回もインタビューのリクエストを快諾していただき、ドラム・クリニック後にわざわざ時間を割いてくれました。30分弱の短い時間でしたが、終了したばかりのサマー・ツアーの話題などについて聞いてみました。

このような機会をありがとうございます。そして、再び日本にようこそ。

ありがとう(笑)。

もうすでに日本に来て数日経ましたね。

そうなんだ。でも明日帰るんだよ。

そうすると、時差ボケからは回復してませんね?

そうだよ、今朝は午前3時に起きたよ。葉巻を吸って街を歩いてたんだ(笑)。

大変なスケジュールですね。さて、サマー・ツアーが終わりましたね。楽しめましたか?

そうだよ、終わったよ。最高だったよ。バンドはとても良く演奏できたしね。

ツアーで最も印象的だったことは何ですか?

観客のエネルギーが普段より高かった気がしたね。それはスーパーボウルの影響かもしれないね。バンドをとても見たいという人たちがいて、新しいファンも来てくれて。そして、カナダでも演奏したよ。カナダではしばらく演奏してなかったんだ… トロントやバンクーバーではやったけど、カルガリーでは演奏してなかったし、今まで回ってない場所が沢山あった。みんな長い間待っててくれて、そのために特別なエネルギーがあったんだ。

最も思い出に残ったのは、そのカナダのコンサートですか?

いや、全てが思い出深いよ。特別な一つ、というのはなくて…(ニューヨークの)Madison Square Garden と(ハリウッドの)Hollywood Bowl は、いつでも演奏するのが大好きなんだ。Red Rocks (Amphitheatre) (*1) も大好きだけど、今回は演奏しなかったんだ。バンドの仕上がりもとても良かったし、ツアーの最初のショウからバンドはずっと良かったよ。

Heartbreakers の観客は本当に素晴らしいんだ。いつも素晴らしいよ。だから、それが毎晩こちらの気分を盛り立ててくれるんだ。でも、何が特別なのか分からないけど、Madison Square Garden と Hollywood Bowl で演奏するのはいつも好きなんだ。その2箇所には特別な魅力があるんだ。それが何なのか分からないんだけどね。Red Rocks もそうなんだ。長年もの間、そこでの演奏は毎回特別なんだ。何か分からないんだ。会場の音なのか、その会場で(過去に)沢山音楽が演奏されてきたからなのか… 何かが起こるんだよね。

セットリストの新しい曲は楽しめましたか?

(The Traveling)Wilburys の曲(”End Of The Line”)のこと?

そうですね、あとは”Rebels”なども。

あの曲は確か4回しか演奏しなかったはずだよ。

彼女(=Mayu)はちゃんと数えてますよ(笑)。彼女は管理人(webmaster)ですから、全ての曲を把握してますよ。

え、そうなの?数えてたの?(笑) 確か4回だよ (*2)。僕の友達がよくショウに来てくれるんだけど、「”Rebels”を本当に聴きたいよ」って言いながら毎回逃してたんだけど、あるときにようやく当たったんだよ。

次のショウで演奏する曲目のを決めるのは誰なんですか?

Tom だよ。いつもそうだよ。

今回のツアーの特別なところは Steve Winwood との共演ですが、それはどうやって決まったんですか?

僕たちは Steve と曲を演奏したかったんだ。彼が「で、どの曲やる?」と言ったから”Can’t Find My Way Home”と”Gimme Some Lovin’”を演奏したんだ。毎回ではなかったけどね。何回か分からないけど… あなたが知ってるよね、管理人でしょ!(笑) 多分6~7回だったかな。

Mayu:  もっとでしたよ。10回以上です(*3)。

え、そうなの? 10回か。まあ、だいたい当たってたかな。

共演したコンサートを彼女は見ましたが、Benmont Tench の喜びぶりが印象的だったそうです。

そうか。だって、彼は Steve Winwood だからね(笑)。

他のバンド・メンバーたちも共演を喜んでいましたか?

間違いないね。Steve との演奏は最高だった。彼の声、そして才能は素晴らしいよ。彼は60歳だけど、声の力強さは昔と同じだしね。曲のキーはほんの少し下げてるよ。声は昔ほどのすごい高さではないからね。でも、昔の彼の声は超高音だけど、今でもすごく高音だからね。

素晴らしいですよね。

ああ、美しい歌声だね。一緒に演奏して楽しかったよ。


ツアーが終わった今、セッションや演奏などの予定はあるんですか?

ロサンゼルスにある僕のスタジオで、セッションの予定はいくつかあるよ。フランス人アーティスト Franck Bedez (*4) と… 彼はベーシストなんだ。そして、数週間後には John Barnes (*5) とちょっとやることがある。彼は Michael Jackson の作品を色々とやった人なんだ。

予定が沢山入ってるんですね。

僕のスタジオは引っ越したんだけど、引越しが終わってセッティングしたらコンピューターが壊れてね。だからそれをコンピューター屋さんに出すのと、新しいマイクロフォンを帰ったら何日かでセッティングするんだ。

ツアーが終わってすぐに働き始めるんですか?

ツアー中に働くんだよ(笑)。

Heartbreakers の当面の予定は何か入っていますか?

何をやるか、まだ分からないんだ。ライヴ・アルバムは出る予定だよ。僕たちはすべてのショウをレコーディングしていて、Mike はそれを聴いてミキシングしてるんだ。音源をエンジニアに渡してミキシングしてね。だから、ライヴ・アルバムは出る予定だよ。もしかしたら、次にアメリカのツアーに出る前に Tom は(スタジオ)アルバムを作るかもしれないね。

それは Tom のソロ・アルバムですか?

それは分からないんだ。見当つかないよ。彼らは決して何も教えてくれないんだ(笑)。

例えば、『Highway Companion』は元々ソロ・アルバムの予定だったんですか?

そう、あれは彼が自分自身で作ってたものなんだ。

過去のあなた達のアルバムはどうですか?例えば『The Last DJ』とか。あれは元々 Heartbreakers のアルバムとして(レコーディングが)始まったんですか?

いや、覚えていないね。あのときは Ron (Blair)がバンドに戻ってきたときでね。その辺がどう始まったかは本当に覚えていないんだ。でも、ここだけの話だけど、Heartbreakers のアルバムをやらなきゃいけないんだ。だから、僕たちになると思うな。

さらに遡って、『Echo』の頃のエピソードは覚えてますか?あなたの Heartbreakers としての初めてのアルバムですよね。

いや、最初は『Wildflowers』だよ。

もちろんそうなんですけど、あれは Tom Petty のソロアルバムですよね。Heartbreakers ではなくて。

そうだね、僕もその違いがすごく難しく感じるんだよ(爆)。いつも同じ人がやってるからね!もちろん、Jeff Lynne のとき(『Highway Companion』)には、Tom と Mike と Jeff だけだったからね。

それに関連してですが、あなたは昔は「Heartbreaker」ではなく「Sidebreaker」と呼ばれていましたよね。それは公式な肩書きだったんですか?

それは分からないな。あれはマネージメントによって創作されたものだと思うよ。何かをやってほしいけど(マネージメントが)お金を払いたくない場合は Heartbreaker なんだ(笑)。何かをやってほしいけど特に貢献しない場合は Sidebreaker なんだ(笑)。その調整が必要だったんだよ(爆)。

ビジネス的な理由が沢山あったんですね。

そう、ビジネス的な理由なんだ。Sidebreaker という肩書きは… 正直なところ僕は好きじゃないんだ。15年間バンドで一緒に演奏して、僕は Sidebreaker 以上だと思うんだ。

それは間違いないですよ。今は誰もあなたのことを Sidebreaker なんて呼んでませんよ!

でも、面白いことがあってね。今回のツアーで Ron と一緒にいたとき、ある男が近づいてきて、Ron にギターにサインしてほしいと言ったんだ。それで Ron はサインして僕にギターとペンを渡してくれたんだけど、その男はペンを奪って「オリジナル・メンバーだけだ」って言ったんだよ。

え、そうなんですか?

それで「あのな、俺はこのバンドで15年間演奏してきたんだよ」と言ったんだ。それはバンドとしてはずいぶん長い期間だと思うんだ。だから、そいつにペンを投げてやったよ!(爆)そして、多分、罪悪感を感じたからだと思うけど、そいつが次の日にまたやってきて、サインしてほしいと言われたんだ。だけど、僕はサインしなかったよ。だから、このオリジナル・メンバーという件は僕にはよく分からないし、変な感じがするんだよね。僕は実際気にしないし、Tom も気にしないし。

殆どのファンは気にしていないですよ。僕たちも含めて。大切なのは音楽ですから。でも、ビジネスのことがあると時々混乱してしまうんです。

それは分かるよ、分かるよ。僕も混乱するからね。まあ、そんなこと気にしないようにしているよ。僕が悪い行動を取らなければさらに良いんだけどね(笑)。


Heartbreakers のためにセッションやリハーサルは予定されているんですか?

いや、何もないよ。休暇だね、停止時間だよ。

普通は、ツアーが決まってリハーサルの日時が決まる、という段取りですか?

そう、電話があって、これをやる、あれをやる、と聞いて、これをやるからその期間を空けてほしいと言われるんだ。

例えば、今回のツアーは5月末に始まりましたが、いつリハーサルを始めたか覚えていますか?

リハーサルを始めたのは… 5月の第1週だったね。リハーサルが3週間あって、機材を送るために1週間あるんだ。

そうすると、(リハーサルは)かなり集中した期間なんですか?

うーん、最初の1週間は曲を復習したり新しい曲をやったりして、それからプロダクションに移るんだ。ステージで演奏して照明に慣れたりね。

今回のツアーで披露された新曲は、そのリハーサル期間中に演奏されたんですか?

そうだよ。

その期間中に演奏されながらもコンサートで演奏されなかった曲はありましたか?

(沈黙) … そうだね、あったんだけど覚えてないな…

前回お会いしたときには”House In The Woods”を演奏したいと語ってましたよね。

そうだね、でもそれは演奏しなかったな。忘れちゃったな… (沈黙) あ、そうだ、ツアーの一番最初のショウで1回だけ演奏したんだ… “Spike”だ。1回だけ演奏したけど、僕たちはセットの中でどうやって入れたらいいのか分からなくて、(セットリストから)外しちゃったんだ。”Straight Into Darkness”も1回やったかな。あの曲は演奏するのが楽しい曲で、もしかしたら2回演奏したかもしれない (*6)。

昔からのファン達は、”Even The Losers”や”Straight Into Darkness”などの昔の名曲を聴きたがってると思います。そういうことをメンバー達で話し合うことはあるんですか?

いや、全ては Tom の判断なんだ。時には「あれを抜いて、これを入れよう」と言って、それを演奏することはあるけど、何を演奏するかは彼の判断だよ。彼のショウだからね。

あなた自身のアーティストとしてのお話も教えて下さい。あなたは今日(のドラム・クリニック)で歌ってましたよね。普段はすることではないですよね?

いや、あのときは曲を思い出してたんだ。演奏するときにはいつもその曲のことを考えているんだ。

自分で歌ったりそれをレコーディングすることはあるんですか?

いやいやー、僕の声はひどいからね。

あまりそうは感じませんでしたよ。

それは他の楽器と一緒に演奏してないからだよ(笑)。他の楽器と演奏してると音痴なのが分かるよ(笑)。

でも、僕達は楽しみましたよ。

じゃあ、ドラムとボーカルだけのアルバムをやろうかな(笑)。

個人的には、あなたが過去にレコーディングした曲を完璧に覚えていたのに驚きました。観客から Average White Band とその前のバンド (*7) の曲の質問があって、あなたは全てのフレーズを覚えていましたよね。すごいと思いました!

たくさん覚えているよ。

それは体で覚えているんですか、それとも頭で覚えているんですか?

いろんな曲を(記憶として)覚えているんだ。一部の曲では記憶を取り戻さなきゃいけないけど、殆どの曲は何を演奏したか、またはその中心部分を覚えているね。

他の Heartbreakers はリハーサルで歌うんですか?例えば Benmont や Scott はコーラスを取りますけど、彼らはリード・ヴォーカルを取りたがりますか?

(サンフランシスコの) Filmore Westで演奏したとき、Scott は歌ったね (*8)。

Mayu: “Little Maggie” (*9) ですね。

そう、”Little Maggie”だ。すごいね!(笑) Benmont は一度も歌ったことがないね。Mike は歌ったことがあるね。

一同: “I Don’t Wanna Fight”(笑)。

Mike はその一曲だけ歌ったね。

Mike がまた Heartbreakers で歌いたがってるか知ってますか?

それは分からないね。彼は The Dirty Knobs をやってて、あのバンドは彼の子供みたいなものだからね。

あなたがコーラスをやるという話は浮上していますか?

NO!(爆) いや、絶対歌わないよ、Heartbreakers では絶対歌わないね。

僕たちは期待してるんですけどね(笑)。

そうか、でもそれは絶対実現しないよ(笑)。

作曲は続けていますか?

まだだね、新曲を始める前に仕上げなきゃいけないことがあるからね。でも、”Joe”の新しいヴァージョンをやったよ。

『The Last DJ』からの曲ですね。

The Rolling Stones の(バックグラウンド・ボーカリストの)Bernard Fowler が歌ってて、Randy Brecker (*10)と彼の奥さんがホーンを演奏してね。Tom の(ヴァージョン)とはちょっと違うけど、とてもとても良いよ。

すごいですね。それは是非聴きたいです。

そのうち聴けるよ!

ああ、もう時間ですね。忙しい中、このような機会を本当にありがとうございます。

問題ないよ。また会おう!

1)コロラド州デンバー近郊にある屋外コンサート会場。
2)今年のツアーでは6回演奏(ただしセットリストの公開されている37公演のみカウント)。
3)”Can’t Find My Way Home”は10回、”Gimme Some Lovin'”は13回演奏。
4)ラテン音楽を中心に演奏するベーシスト。
5)Michael Jackson 『Bad』などでシンセサイザーを演奏したキーボード・プレイヤー。
6)”Spike”、”Straight Into Darkness”ともに2回演奏。
7)Brian Auger’s Oblivion Express。
8)1997年、1999年ともに披露。
9)Stanley Brothers のカヴァー。
10)トランペット奏者。1970年代には弟の故 Michael Brecker とともに Brecker Brothers を結成し一世を風靡した。

インタビュー: 2008年 2月 10日(東京)
インタビュー & 翻訳: Shigeyan  サポート・スタッフ: TOSHI、Mayu