「Sound City」と TP&HB

映画「Sound City」

「 Sound City – Real To Reel 」は 1969年にオープンし、数々の名作のレコーディングが行われながら、2011年5月に惜しくも閉鎖されたスタジオ「Sound City」のドキュメンタリー。監督は Dave Grohl。 Nirvana そして自身のバンド Foo Fighters で Sound City を使用してきた中で、その虜となった彼は、この伝説的なスタジオの栄枯盛衰を追った映画を制作するに至りました。

数多くのミュージシャンや関係者へのインタビューを軸に展開する作品には、Tom Petty、Mike Campbell、Benmont Tench も出演しており、Sound City でのレコーディングにまつわる様々な思い出を語っています。


3人ともハット姿でインタビューに応えてます。それぞれのキャラ(?)が表れて面白いです。

← 出演者の中に見つけた懐かしい顔、私たちにとっては女神のような御方。その理由はこちらに。

Director : Dave Grohl
Running Time : 108分

Release Date :
* 1月 18日 – Sundance Film Festival にてプレミア上映
* 2月 1日 – アメリカ、カナダ、イギリスにて期間限定公開
iTunes StoreSound City Movie 公式サイトにて発売
* 3月 12日 – DVD および Blu-ray 発売開始

Official Site :soundcitymovie.com/
Facebook : facebook.com/soundcitymovie

Cast :

Vinny Appice
Frank Black
Tim Commerford
Mick Fleetwood
Jessy Greene
Rami Jaffee
Nate Mendel
Krist Novoselic
Tom Petty
Rick Rubin
Sandy Skeeter
Corey Taylor
Brad Wilk

Joe Barresi
James Brown
Kevin Cronin
John Fogerty
Dave Grohl
Alain Johannes
Rupert Neve
Shivaun O’Brien
Nick Raskulinecz
Paula Salvatore
Tom Skeeter
Benmont Tench
Pat Wilson

Robert Levon Been
Lindsey Buckingham
Rivers Cuomo
Neil Giraldo
Taylor Hawkins
Jim Keltner
Stevie Nicks
Keith Olsen
Trent Reznor
Chris Shiflett
Pat Smear
Lars Ulrich

Brian Bell
Mike Campbell
Warren DeMartini
Chris Goss
Joshua Homme
Barry Manilow
Rick Nielsen
Stephen Pearcy
Ross Robinson
Jim Scott
Rick Springfield
Butch Vig Lee Ving

TP&HB と Sound City

text by TOSHI

TP&HBのアルバムで(部分的な利用も含め)Sound City が使用されたのは 、『Damn The Torpedoes』 (1979年)、『Hard Promises 』(1981年)、『Southern Accents 』(1985年)、『Let Me Up (I’v Had Enough) 』(1987年)、『Wildflowers』(1994年)、『She’s The One 』(1996年)と6枚にも及びます。

Sound City のどこに TP&HB を惹きつける魅力があったのでしょうか。大きな要素として「Neve(ニーヴ)」の存在が上げられると思います。

Neve とは Neve 社が開発・製造したレコーディング用ミキシング・コンソールのことです。(上の写真は実際に Sound City Studios に設置されていたミキシング・コンソール。)
日本では「コンソール」や「(レコーディング)卓」という通称で呼ばれることの方が多いミキシング・コンソールですが、様々な会社から発売されています。その中でも特に Neve の卓は熱狂的なファンが多く、TPもそのうちの1人です。

20年以上前になりますが、TPは雑誌「サウンド&レコーディング」(1989年7月号)の中で、Neve が好きな理由についてこう語っています。

TP : とても温かいサウンドだから。コンピューターじゃなく、ギターとかピアノとか本当の楽器をたくさん使っている場合は、それが重要なんだ。SSL の卓 (*) は全然好きじゃない。ボクには、とても冷たくて平坦な音に聞こえるんだ。

*SSLも有名なミキシング・コンソールです。

映画「Sound City」の監督を務めた Dave Grohl も Neve の大ファンで、Sound City に備え付けらていた「Neve 8028」を譲り受けて、自分のスタジオに移設してしまったくらいです。その様子は映画の後半で記録されていますが、とにかく嬉しそうな Dave の表情が印象的でした。

ちなみに、TP&HBが使用したことのあるスタジオを調べてみると、ほとんどに Neve があることが分かりました。 (Sound City Studios、Cherokee Studios、Record Plant L.A.、Village Recorders、Cello Studios、M.C. Studios など。)

Neveの卓以外にも Sound City の魅力として、素晴らしい響きを得ることができるライヴルームも忘れることはできません。オーバーダビングを重ねることよりも、ライヴ感を重視した音作りをしていた時期のTP&HBが、このスタジオを重用したのは、ライヴの音そのままを収めることができるライヴルームの存在が大きかったのではないでしょうか。

ただ、近年は自分たちのスタジオの設備を拡充し、時間や予算に縛られること無くレコーディングが行えるようになり、TP&HB と Sound City との関わりが薄くなってきました。 また、映画の中で多くの時間を割いて描かれていますが、「デジタル化」の流れとアナログテープへの録音を基本に考える Sound City の存在は相反するものでした。どちらが良い悪いかよりも、効率を求められた結果、伝説のスタジオはその幕を閉じるしかなかったのでしょう。

TP&HB at Sound City Studios

上の8枚は 『Damn The Torpedoes』から『Hard Promises』あたりのセッションのもの
下の6枚は 1996年前後、TP、Johnny Cash、Carl Perkins、Rick Rubin というメンバー