TPとの遭遇 (1986年)

1998年6月、HP(Here Comes A Heartbreaker!)の開設間もない頃に<玲音さん>からお寄せいただいた「TPとの遭遇」レポート。後に大阪オフ会で直接お話を聞かせていただく機会にも恵まれました。ドキドキの詳細をぜひご覧になってください。

STORY text by 玲音 / ray-on

1986年3月、TP&HB がボブ・ディランとともに来日したときのことです。

大阪公演を見た翌日、わたしはたまたま名古屋のとあるデパート(わたしは名古屋の近くに住んでいたので)に用があって出かけました。そして5階か6階のおもちゃ売場で Tom とばったり出くわしました。TP&HB は次の日の名古屋公演のために前乗りしてきたのでしょう。時間は午後3時前後だったと思います。

Tom は子供へのおみやげを物色しているところでした(多分)。わたしは彼がまだしばらくそこにいそうだと推測して、違う階の文具売場まで思い切り走りました。そして色紙とマジックを買って、おもちゃ売場までまた全力で戻りました。それから、わたしは意を決して彼に声をかけました。Tom は日本人の通訳とアメリカ人のスタッフらしき人と一緒で、通訳の人は「プライベートだから」と遮りましたが、Tom はかまわないという仕草でわたしの相手をしてくれました。

昨日大阪でコンサート見た、とっても良かった、みたいなことを言って「Please give me a sign」と頼んだら書いてくれた(あれは英語では autograph というのだと後で知った)。

Tom に名前は何というのだと聞かれたので[M-A-S-A-R-U](マサルという名前です)と順に発音したつもりだったのですが、ちょっと焦っていたのか[M-A-S--R-U]と言ってしまい、Tom は正直にそのまま書いてくれました。

Tom にお礼を言って別れたあと、色紙を見たわたしは愕然としましたが、もう後の祭りです。仕方ないので、持っていたマジックで[U]を無理矢理[A]に直しました。「カッコわるー」でしたけど、Tom にサインをもらったという事実は変わらない、と自分に言い聞かせながら、その当時仕事をしていた事務所のみんなに自慢するために、わたしはスキップをしながら、デパートを出たのでした。

Tom は背が高い印象はあまりなく、わたしと同じレベルの目線で話をしていたような記憶です。透き通るような金髪がきれいでした。このときわたしは29歳、Tom は35歳ですか、わたしはとっても彼のことが好きだったのです。このあとわたしが彼のレコードを毎日毎晩、聴き続けたのは言うまでもありません。

我が家の家宝、玉に瑕、のお話でした。

玲音 <Masaru T.>