Mike Campbell へのインタビューというこの上なく嬉しいチャンスを頂けたのは、この<Guya>ギター がきっかけでした。ここにインタビューに至るまでの経緯をお伝えします。
初めて手にしたエレキギターに関して、Mikeは度々以下のような発言をしています。
「16歳の頃、軍の仕事で沖縄に赴任していた父が60ドルで買ってくれた”GOYA”のギター。ボクの初めてのエレキギターだった。気に入って使っていたけど、Stratocaster を手に入れたときに誰かに譲ってしまい、今は手元にない」
Mike の父はエンジニアだったそうです。彼が16歳の頃といえば 1966年。アメリカが 北ベトナムへの爆撃、いわゆる北爆を再開し、南ベトナム政府軍に代わって戦争に 本格的に突入した時期に Mikeの父は沖縄にいました。そこで彼は息子のために ギターを買ってプレゼントしたとのこと。60ドルといえば当時の日本円で21,600円。
一方、<Goya>というのは1950年代の半ば、ニューヨークの楽器店がスイスの手製アコー スティックギターを販売するために作ったブランド名。スペイン出身の画家<ゴヤ> から名前をとって付けたそうです。60年代にはエレキギターも手掛け、Jimi Hendrix も使うなど、そこそこ知られた存在でした。ただし、<Goya>のギターは決して安価ではなく、また当時、占領下にあったとはいえ沖縄 で<Goya>を入手したという話には疑問を感じていました。
それでも Mike の発言を信じて、Mudcrutch 時代の写真に写っているギターを長らく探してきましたが、全く見つけることができませんでした。
探し始めて数年たった頃、日本の60年代製エレキギターの本を眺めている時に、偶然、同じようなヘッドの形を持つギターを見つけました。それは<Goya>ではなくて、<グヤトーン(Guyatone)>。中でも<グヤトーン LG-130T>と呼ばれるモデルが Mike の抱えるギターにそっくりでした。このギターは1965年(昭和40年)頃に日本で17,000円で販売されていたものです。
Mike は<Goya>と<Guya>、つまり<グヤトーン>を勘違いして覚えていたのだと思います。エレキブームに沸いた昭和40年代、日本でギターといえば、テスコ、ヤマハ、 そしてこのグヤトーンが主要国産ブランドでした。Gibson、Fender、Rickenbacker は 高嶺の花の存在。簡単には手に入れることができませんでした。Mike の父も沖縄のどこかでこれを見つけたのだと思います。ギターを欲しがっていた息子のために、Fender や Gibson は無理だけど、これだったらと思い買ったのでしょう。
<Guyatone>自体はアメリカのブランドに負けない、丁寧な仕事で有名な会社でした。今 でも<Guyatone>を愛用している海外のミュージシャンがいるくらいですから、その品質の高さは本物です。また、製品としての優秀さに加え、その独特なシェイプも人気の要因です。Mike の初めてのエレキギターとしては充分に用を成していたはずです。
text by TOSHI
メールマガジン 【Depot Street: vol. 131】(2009年11月11日配信)より<要約>
Mikeが最初に所有していたエレクトリックギターは本人談「Goya」ではなく、日本製「Guya」ではないかという、スタッフ TOSHI の渾身かつオタク度全開のレポートが【Depot Street】に報告されたのが昨年11月。程なく、同モデルのギターをYオクで発見した TOSHI はさらに企画を進めて、これを Mike に贈りたいと考えました。もちろん、相談された他2名のスタッフも大賛成で、この企画に乗りました。
間もなく、Mike の60回目の誕生日(1950年2月1日生まれ)、もしかしたら喜んでもらえるかもしれない… 3人揃っての妄想が始まりました。
念願のギターを手に入れたものの、当然新品ではないためメインテナンスしつつ、Mikeへのメッセージとプレゼント(ギター)に関する解説を作成して、プラスαでお願い事もしてみようと、あれこれ考えるうちに作業に手間取ってしまい、アメリカに向けて発送したのは2月5日。既に Mike の誕生日を大幅に過ぎていました(焦)。
その後は、EMSの配送荷物追跡調査に一喜一憂しつつも、意外とあっさり2月9日にはロサンゼルスに到着。送り先には事前に連絡をしていたため、怪しまれずに無事に受け取って頂けました(ホッ)。送ったものが Mike 本人の手に渡るのかという根本的な不安要素もあった訳ですが、今回は送り先での親切丁寧な対応に最大限に助けられました。
それから数日… ついについに、件のギターを Mike 本人に引き渡して頂き、同時に「Mike はギターがすごく気に入ってる」という報告まで頂きました。これにはスタッフ一同、大興奮&大感激。
加えてさらなるサプライズ!!!実はプラスαのお願い事として、メール・インタビューができないかと書き添えていたのですが、プレゼントに喜んでくれた Mike が感謝の気持ちとして、インタビューに応じてくれるというのです。なんて素晴らしい(涙)。
という訳で、今回ホームページに掲載したインタビューの実現となったのです。
限られた時間とメールでの質問という手法もあって、インタビューとしては十分ではないかもしれませんが、ファンとして(ファンサイトとして)、我々にできることの最善は尽くしたつもりです。より多くのファンのみなさんんにご覧になって頂ければ何よりも幸いです。
寛大にも我々のリクエストに応えてくれた Mike に心からの感謝を捧げます。ありがとうございました。