Vintage Guitar Magazine (2006)

TP と Mike のギターを大特集した Vintage Guitar Magazine から2人のインタビューを。

Tom Petty and Mike Campbell:
Guitars at Heart for 30 Years

Vintage Guitar Magazine 2006年 11月号

Tom Petty

最初の Heartbreakers の作品が発売されて30年経ちましたが、頭の中をよぎることは何ですか?

(笑)何がよぎるかって?そうだね… 色々だね。その質問は最近よく聞かれるんだ。でも、(30年の間)基本的に同じエンジン(訳注:メンバー)で動いてる、ってことだね。何回か改造はあったけど、基本的には一緒なんだ。

あなたは曲をギターで書くんですよね。

そうだね、大体はね。確か『Highway Companion』はすべてギターで作曲したはずだ。

あなたが作曲する方法にギターはどう影響を与えているのですか。

そうだね、ギターはそれぞれ違う音がするだろう?だから、あるギターが、(曲に)馴染むときもあるし、そうでないときもあるんだ。

あなたの成功を考えるとき、他の楽器と比べてギターが大きな役割を果たしたと思いますか。

それは間違いないよ。自分にとってギターは常に原点だよ。僕が小さい頃は、カウボーイたちがギターを弾いてたし、Elvis も弾いてたし、The Beatles も(The Rolling)Stones も弾いてた。The Beatles は特に大きな存在で、1964年にはとにかく誰でもギターを欲しがってたよ。ギターなしのロックンロールなんて、あまりにも悲しいと思わない?

あなたは自分のことをギター収集家だと思っていますか?それとも、特定の曲に特定のサウンドが必要だからその都度ギターを買うのですか?

まあ、一本だけあれば十分だろ?(笑)

え、そうですか?!

実際には、一本以上は必要ないと思うよ。でも、好きなんだよね。(買う)お金がある時はいつも買っていたんだ。Heartbreakers が進化するに従って、Mike も僕も気に入ったギターがあったら、買っていたんだ。ある日、それらを見たら何百本とあったんだ!でも、実際のところ、僕たちのは仕事上のコレクションさ。使えないものは買わないよ。

ギターが沢山あるときの美学的な価値は格段ですよね。一本だけ持っているのとは違いますよね。

まあ、僕の場合、(ギターは)芸術的作品だと思っているよ。15歳の頃、楽器屋で働いてたんだけど、そのときに楽器の知識をそこそこつけたんだ。当時は、古いっていうのを理由に(ギターを)安く引き取っていたよ。もちろん、その数年後には、逆転して古いギターが新品より遥かに高くなったんだけどね。まあ結局、新しいのは古いのほど良くない、ということだろ?僕は良い楽器を弾きたいだけで、新しい楽器はあまり耐えられないんだ。

お金がなかったために欲しいギターを買えなかったのはどのくらい前のことですか?

うーん、それはかなり前のことだな…(笑)。レコードを出して以来、お金は手元にあったから、それは問題にならなかったな。10代の頃は、何十本ものギターが欲しいのに買えなかったけどね。

そうすると、それ以降、あなたは欲しいギターを全て手に入れた、ということですか?

そうだね、大体はね(笑)。今は、特別なギターがあったとしたら、それを買うようにしてるよ。時の流れで忘れられてしまったり、ガラスの奥に飾られてしまう前にね。ギターは使ってあげなきゃいけないと思うんだ。ある意味、壮大な追求かもしれないね。でも、使う予定がない限りギターは買わないよ。

最近、手放したギターはありましたか?

ああ、それはいつもだよ。先日は(Fender) Mary Kaye ストラト(*1)を手放したところだ。見た目がどうも気に入らなかった… きっと惹かれなかったんだろうね。

具体的に欲しいギターは何かありますか?

えっ、ちょっと考えさせてくれよ…。今、持っている Hofner Club ベース(*2)と同じくらい良いベースを探し求めてるところなんだ。このベースは本当に良いからね。何本か(同じモデルを)探したんだけど、これと同じサウンドと感触を持ったものはなかったんだ。それを探し当てたいね。Highway Companion ツアーの1stレグでは何本かギターを買っちゃったよ。

あなたの赤い Rickenbacker 660/12について教えて下さい。あなたと関係がとても深くて、『Damn The Torpedoes』に写っている、あのギターです。

あれは本当は Mike のものなんだ。Rickenbacker が(あの形で)作った3本目の12弦だよ。最初は気付いていなかったんだけど、George Harrison が2本目を持っていたから知ることが出来たんだ。ソリッドボディー(*3)で出来た最初のモデルだよ。Mike が昔、広告で見て数百ドルで買ったんだ。

あのアルバム・カバーは、Rickenbacker を復活させたような気がします。

そうなんだ、彼らはたっぷり感謝してくれたよ。ひたすらにね。彼らは僕に Tom Petty モデルを作ってほしいと提案してくれて、実際に作ったわけだ(*4)。(仕様を)少し変えたけどね。(中略)

彼らは(Tom Petty モデルを)1000本作ったけど、その後も Tom Petty モデルと呼ばずに作り続けているんだ(*5)。(中略)Bruce Springsteen がそれを使ってるのを見て、「それは僕が発明したんだ!」って伝えたんだよ(笑)。まだ作られているし、実際のところ、かなり良いギターだよ。僕もショウで使うからね。 

ただ、一番好きな Rickenbacker は、(TV番組) Tonight Show (*6)で使った、ブロンドのセミ・ホロウ・モデル(*7)だよ。これは”The Waiting”とか、代表的な12弦の曲で使ったものなんだ。大体これなんだ。そもそも買ったのは、Roger McGuinn が使っていたからさ。

64年の(Fender) Stratocaster (*8)は、長年使っていて今回のツアーでも使っていますが、あれはもともと Mike のギターなんですか?

そうなんだ。Heartbreakers の前、僕はもともとベーシストだったから、エレクトリック・ギターは持っていなかったんだ。僕は Gibson Dove(アコースティック・ギター)を、彼はストラトを持っていたんだ。そして僕が使い始めて… そうなんだ、何年も使ってるんだ。去年、あのギターを抱えていた昔の映像を見たことを皆で話していたんだよ。それで、ふと思ったんだ。「あのギターどうしてるかな」って。ギターを取り出したところ、とても素晴らしかったんだ。

もし、これからのレコーディングで3本か4本のエレクトリック・ギターしか選べないとしたら、どれにしますか?

とても良い Telecaster。セミ・ホロウの12弦 Rickenbacker は絶対だね。あとは…分からないな… Strat と、良い Gretsch を選ぶかな。

1) 1957年、ギタリスト Mary Kaye(1923-2007)が使用したことで命名された、ブロンド色、ゴールド・パーツのストラトキャスター。
2) Paul McCartney のバイオリン・ベースで有名な Hofner社のベース。
3) 単板の、中をくり抜いていないギター本体。
4) Rickenbacker 660/12 TP。このギターにまつわる逸話はこちらに載っています。
5) Rickenbacker 660/12
6) 2006年7月20日放送。”Saving Grace”を演奏。
7) Rickenbacker 360/12MG。昨年のツアーでは”Saving Grace”で使用。
8) サンバースト、ローズ・ネックのモデル。昨年のツアーでは”I Need To Know”などで使用。

Mike Campbell インタビュー

注目している最近のギタリストはいますか?

とても沢山いるよ。生きてる人から始めると… J.J. Cale はいつもインスピレーションを与えてくれるんだ。もちろん Mark Knopfler もだ。彼は J.J.(Cale)のスタイルをたっぷり吸収しているように思うんだ。この二人はとにかく大好きだよ。彼らがすることはすべて好きだ。

他には… 新しい若手バンドはあまり聴かないな。育ったときに聴いてたものに惹かれがちだね。The Beatles、(The Rolling)Stones、Beach Boys、Jimmy Page、Eric Clapton、Michael Bloomfield … 僕が育ってきた世代だ。新しいものよりも、そういうものを何度も何度も聴いて(過去の作品に)戻っていくんだ。

George Harrison はどういう位置付けにあるのですか。

彼は最上級だよ。僕にとって大変なインスピレーションの源で、幸いなことに友達になることも出来たんだ。彼は素晴らしい人だったよ。僕が思うに、ギターに対する彼のアプローチは「曲に合うための演奏」で、弾きすぎないことだった。Beatlesの曲はどれも美しいソロがあって、良い音色で間延びすることもなくて… 一つ一つの音が演奏者でなく曲にとって意味があったんだ。同じことは Carl Wilson にも言えるね。George は僕の中で頂点にいるんだ。彼と、彼のような人たちも、だけどね。

Keith Richards は僕のヒーローだ。Michael Bloomfield や Jimi Hendrix のように、ギターを熾烈に弾く人たちも同じように好きなんだ。George Harrison と Jimi Hendrix を比べたら、まるで違う星の人のようだけど、僕にとっては同じくらい惹かれるんだ。当時はあまりにも素晴らしいギタリストが沢山いたから、好きな人を絞るのは難しいけど、George がそのうちの一人であることは間違いないよ。

【Depot Street: vol. 100~103】(2007.4-7)掲載  翻訳: Shigeyan