The Ten Things That Piss Off Tom Petty (2002)

< TP を怒らせる 10 の事柄 >

Rolling Stone / 909号 2002年11月14日

1. ラジオなんて聴く価値すらない

ラジオなんて本当にどうでもいいよ。もう聴いてないんだよ。だけど、僕の曲が放送禁止になった話は勇気づけられたよ。だってさ、『反ラジオ』な内容という理由だけで放送禁止にした(*1)のは最大限の賛辞さ。2002年には、放送禁止用語や暴力を煽る内容が入ってない曲が放送禁止になるという訳さ、本当にスゴいと思わない?何を怯えてるのさ?だってさ、こんなに『親ラジオ』の曲ってないんだよ。

ラジオが人々にとって意味を持ってた時代を思い出すよ。ラジオで語ってる人たちを楽しく聴いたんだよ、たとえ彼らのことが嫌いでもね。彼らは人格があったのさ… 彼らは志向を持ち、皆はそれを信用してたのさ。今はそれが消滅しつつあるよ。(”The Last DJ”は)アルバムを始めるにあたって良い例えだと思ったのさ。

1)”The Last DJ”が放送禁止になった件を指しています。

2. みんな金のことばかり考えてる

「さて俺らは独創的なことをやって、ついでに利益が出たぞ、どうだ?」なんてセリフはもう聞かれないよね?周りを見渡すと、みんな「どうやって最もお金を稼ぐか」ばっかりだ。危険で堕落した価値観さ。そういうところからラジオ(放送内容の)プログラミングやらラジオ調査やらアホらしいものが台頭してきたんだ。それが現在のポップ・ミュージックを作ってきたのさ。利益を欲しがるあまりに全て… 道徳、真実… をドブに捨ててるんだよ。

裕福になる考えは行き着くところまで行ってしまってるよ。ねえ、僕はリムジンなんか乗らないよ。リムジンに乗ったらひどい気分になるよ。60年代の良いところは今とは全く正反対だったことだね。金持ちに見えることは愚かなことだったんだよ。

3. CDのために、$20(約2,400円)も払わせるのはひどすぎる

音楽業界が、インターネットやら無断コピーについて怒ってるのはおかしいことだよ。何で人々はコピーするのかって?それは代金を払えないからだよ。僕は決して音楽を無料ダウンロードすることを許してる訳ではないよ。決してフェアーではないよ、だけど気持ちは分かるよ。もしCDの値段が、$8.98(約1,080円)まで下がったならば、業界の多くの問題が解決するんだよ。(後略)

4. コンサート・チケットを $150(約18,000円)にするのは欲張りなヤツだけだ

僕のチケット代金は、最高で$65(約7,800円)程度さ… それで十分な利益を得てるよ、ツアーで何百万ドルと稼げるんだよ。値段をそれ以上に上げる理由なんてないんだ。もし仮に不安なプロモーターが「これは$150にしてもいいよ」と言ってもね。僕はまた(同じ場所でコンサートを)したいから、人々に後味の悪い思いをしてほしくないんだ。

最近の自分たちのコンサートで車を乗り入れようとしたら、$30(約3,600円)も駐車料金を取られるのに愕然としたよ。「彼らはチケット、ビール、その他でも金を落としてったし、さて次には駐車場かな」なんていう考え… 間違ってるよ。

5. レコード会社はアーティストのことなんか気にしてない

一緒に育ててくれ、過ちを教えてくれ、僕らのペースで成長させてくれる人がいなければ、僕らのようなのは今日この場にいないんだ。今となってはヒットがなければ… もしヒットがあったとしても… 次の時には用がなくなるんだ。「こいつらが次のヒット曲で戻ってくるのを待つ必要なんてないぜ。他の奴を呼べばいいじゃないか」ってなるのさ。馬鹿げた考え方さ。こんな人たちは音楽じゃなくて収支表を見てるのさ。音楽を放送したり提供する人たちの多くは、その音楽を実際に聴いてないのさ。

6. 汚い歌詞には虫唾が走る

聴く音楽にイライラするよ。もしかしたら、それは僕のための音楽ではないかもしれない。ヒップホップ音楽が僕に影響を与えるためには、僕は聡明すぎるのかもしれない。宝石とか、どれだけカッコ良いかが、僕の人格を大きく変えると考えるには、僕は賢すぎるのかもしれない。もし、あなたがそれが楽しいと思うなら、どうぞお楽しみ下さい。しかし、僕はそれ以上のものを求めてるんだ。

僕が若いロックン・ロール・スターだった頃、自分の言葉の持つ意味、その力にはよくショックを受けてたよ。誤解を招いてはいけない、という意味でもね。(歌詞の)検閲は支持しないけど、アーティストは公表するものに対して道義的責任を持つべきなんだ。今の若い人たちは、痛い思いをしてそれを理解していくんだろうな。自分が言うことが注意不足だったりくだらなかったら、実際に何らかの被害を与えてしまうことに気づく前にね。

7. 少女を性的に扱うのは最低の文化だ

これはひどいことだよ。ポップ・ミュージックだけではなく、ファッション、テレビ、広告… 我々の文化のあらゆる要素のことさ。女の子や子供が尊重されてないんだ。なぜ我々は少女猥褻の国家を創らなきゃいけないんだ?(中略)

これは止めておこうよ。「9歳の女の子を連れてきて、売春婦みたいに着飾ったら儲かったぜ。もう一回やろうか。」なんて言ってる広告代理店の人たちには関われないよ。

8. どうして金持ちになることを褒め称えるのか?

チケットの問題の話に戻ろう。僕らはボックス・シート(*2)やVIP席は設けないんだ。一番良い席を取っ払って高いカネをとることが、ロックン・ロールとどう関係あるのか分からないよ。多くの場合は、企業がこの席を買い占めて、しかもそのお金は(消費者が)どう使われてるのか分からないうちに(企業に対して)払ってるのさ。で、接待客を喜ばせるために使われるんだ。こういう席を買う人の多くは、音楽なんて全く気にしちゃいないんだ… ウェイターを捕まえなきゃいけないからさ。ステージから見えるのは、その場にいることにあまり関心のない、お互いに話し合う集団。そして、関心のあるかわいそうな人たちは、ずっと後ろの座席に座ってるのさ。

2)原文では「Golden Circle」。『The Last DJ』制作段階では当初、アルバム・タイトルと伝えられていた。

9. テレビはさらにひどい

テレビは本当に危険なものになったと思うよ。とにかく、モラルの尺度なんてあったもんじゃない。お金に関わることを話したいんだったら、テレビを見てるがいい。とにかく危険なんだ。テレビはあなたのことを気にかけないし、あなたがどうなるかも知ったこっちゃない。あなたの健康に良くないんだ。 (中略)

テレビ業界と比べれば、音楽業界は純真な学生みたいなものさ。テレビ業界は儲けることしか気にしてないからね。(そのためなら)自分の子供を殺す映画だって作っちゃうんだぜ。そして殺人者の役者をテレビに出すんだ。そのうちに、そいつが自分の番組まで持っちゃうことまであるんだ。

10. 多くのアーティストも業界と同じく欲深い

このことも言わせてほしいよ。僕は業界のみに全ての責任があるとは思わないんだ。考えてみようよ、音楽業界はいつだって笑っちゃうくらいにひどかったよ。常にね。でも時には、問題の発端はアーティスト自身なんだ。アーティスト達は、必ずしもビジネスマンじゃない。そして、彼らは自分たちの名前のもとに起こってる全てのことを必ずしも把握していないんだ。一部の人は音楽だけを創っていたいんだろうけど、アーティスト達の中にも多くの欲望があるのさ。気が付いているかどうかはともかく、我々みんなの責任なんだ。まずはアーティストから、自分たちの名前のもと何が行われているのか、もう少し責任を持ち注意を払う時が来たんだと思う。

【Depot Street:vol. 48&49】(2002.12-2003.1)掲載  翻訳:Shigeyan