Magnet Magazine Interview (2003/1)

03/31/2003    投稿者:

「Magnet」は、インディーズを中心に取り上げているアメリカの音楽雑誌。2003年1・2月号掲載の8ページにわたるインタビュー記事「THE REBEL IS IN — Tom Petty, The Man Who’s Not For Sale!」より。

あなたは、どうして企業の金銭的欲望について声をあげたのですか? 企業だって普通の人々だって、20年前から欲深かったのではないですか?

実際のところ、時が経つにつれ欲のレベルがひどくなってきたと思うんだ。どうして僕がそれを考えたのかは分からないけど…企業の欲望に巻き込まれたひどい時代に我々がいることが頭に浮かんだのさ。それによる影響もはっきりとしてきたから、そのことについて何か言わなきゃ、と思ったのさ。

金儲けの追求は悪いことと思います?

いや。でも、全てのお金を稼ごうとすることは悪いことだと思うよ。

その線引きはどこにあるのでしょうか?

道徳的でない時に線が引けると思うよ。例えば、あなたがお金を稼ぐことで誰かが傷つく時にさ。(中略)テレビを例に挙げてみよう。本当に良い例だよ、だってとにかく危険な物だからさ。何をしているか、何を言ってるか、どういう影響を人に与えているのか、そういうことを(テレビは)全く配慮していないんだ。とにかくカネによって動かされてるんだ。視聴者の道徳心を下げ、価値のないものにするんだよ。

あなたはあまりテレビは見ないようですね?

僕はだいたい映画を見てる。テレビにはあまり興味がわかないんだ。ニュースも見ないんだ。数年前にニュースを見るのをやめて人生の見通しが相当明るくなった気がするよ(笑)。(ニュースのように)いつもひどいことが周りに起こってる訳ではない、ということさ。ニュースは危険なんだ、だってこの国(のニュース)ではうまくまとめた(バランスの良い)報道がないからね。世界の中ではそんなに悪くないことだって起きてるんだし、その辺のバランスが必要なんだ。ニュースはセンセーショナルなものしか取り上げないんだ。まるで(視聴者を)いつも脅かして、何かくだらないものでも買わせるのさ。

Bruce Springsteen、Neil Young、Steve Earle と違い、あなたは9月11日の件を歌ってはいませんね。どうしてですか?

それは分からないな。あの頃にはレコード制作の大部分が終わってたし、一部分ではあまりにも悲しいことで、曲にそういうことを加えたくないと思ってたんだろう。(その件は)大衆娯楽を超えてる内容で、(曲を書いたとしても)その出来事の意味を下げてしまうように僕は思ったんだ。そのことについて曲を書くことには惹かれなかったさ。

そういう曲を書いたミュージシャン達は成功したと思いますか?

どれも聴いていないんだ。本当にウソくさいカントリーの歌は確かに聴いたよ。あまりにもひどくて、国旗を駐車場で売ってるのと同じくらいのレベルだと思ったよ。

だけど、それはそんなに珍しいことではないですよね。

そう、そうなんだよ、ここアメリカではね。だけど、その旗が振られる時といえば、誰かが死ぬ、という時なんだ。僕はそう考える。僕はこの国が大好きなんだけど…あちらこちらのアメリカ国旗を見るたびに、誰かが死んでる、ということを考えるよ。僕は未だに戦争は間違いだと思ってる。今時そう考える人は少ないのかもしれないけど…。もし、あなたが誰かの小さな女の子を殺すとしたら、あなたは暴力を永遠に続けさせるだけだと思う。(殺された側は)あなたのことを永遠に憎しみ、そしてそのうちにそれがあなたの身に降りかかってくるだろう。憎しみを上回るのは愛しかないんだよ。それは何千年も前から言われてることなんだけど、それが事実なんだよ。

9月11日はアメリカにおける物事への考え方を変えたように感じましたか?

僕は、それが何も変えなかったことに驚いているよ。皆、暴力的な娯楽とか価値のないものへの興味が変わるんじゃないかと思ってたよ。自分の心を振り返り、「ちょっと待てよ、これは悪いことだ。暴力的で醜いものには応えないぞ」と考えるのかと思ってたよ。しかし、人々はひたすら意地悪くなってるようだ。強く、醜く、意地悪くなることが、ここまで称えられたことはなかったよ。それは賢くないよ。そういう考えでは落ち着かないよ。

あなたはMCAとの闘いに勝ちましたが、アーティストは一般的にその闘いに負けていると思いますか?

いや、僕は楽観的に考えてるよ。昔と比べて、事態はある程度良くなってると思う。レコード価格の問題は(闘いの後)数年間、僕を痛め続けてきたんだ。
「この闘いをやってるのに、誰も僕のことを助けてくれない」と思ってたよ(笑)。僕を応援してくれる人なんていなかったよ。報道には助けてもらったけどね。長い間、レコードの値段を下げるのに役立ったと思うよ。今となっては、レコード業界を振り返って「僕の言うことを聞いてれば、今のようなひどいことにはなってないのに」っていう贅沢があるのさ。もし、レコードが9ドルだったら、コンピューターで音楽を盗む人なんていなくなるのさ。だけど、業界は品物をあまりにも高級なものにしちゃってるんだ。

中間マージンを取り除くために自分でレコードを出すことを考えたことはあります?

最近よく考えるよ。それは出来ることだと思うんだ。ワーナーのために何枚かレコードを作らなきゃいけないけど、その契約が終わったら僕は多分、独立すると思う。今よりもさらに多くのレコードを出してみたいと思うよ。僕らは本当に沢山録音するんだ。The Beatles が、1年間に3枚のレコードを出してたことも覚えてる年齢だしね。新作が3ヶ月か4ヶ月おきに出ることは珍しくなかったんだ。僕らはそれが出来ると思うよ。発表の間隔がどんどん延びてくことが、この業界では広がってる。今となっては(レコード会社は)2年おきじゃないとレコードを出して欲しくないんだ。でも、それは馬鹿げてるよ。人生は短いんだよ(笑)。僕には創りたい音楽が沢山あるんだ。もし、自分が独立してレコードを出す立場になったら、ワーナーの分と独立した分の音楽(の版権)があると良いと思うよ。番外編のレコードを出すとかさ、まあ何て呼んでも良いんだけど。

インディーズでどういったことが起こってるか把握してます?

(笑) 分からないよ。多分ね。でも、ロックンロールが始まった頃には多くの独立したレーベルがあって、本当に音楽が好きな人達がそれを運営してた時を思い出すから、その考えは良いと思うんだ。彼らは音楽関係の人達で、今の音楽業界を運営している弁護士や会計士とは違うからね。そういったレーベルはそれぞれ独自の味があったんだ。それは本当に楽しくて興奮することだったよ。(中略)今はそれがないのが残念だよ。

僕の意見では、あなたの過去10年間のアルバムはこれまでの中でも最高だと思いますが、発表するごとに売上が下がって、ラジオでもあまりかけられていませんよね?

ああ、悲しいことだよ。

それには新作のテーマが関係してるんでしょうか?

いや。そのことはあまり考えないようにしてるけど、悲しくなるよね。昔のような膨大な数を売ってみたいとは思うけど、現在の一般大衆にうまくフィットするのは難しいと思うんだ。僕らは自分達の小さな世界へ、より専門化しようとしてるんだ。とはいっても、本当に疑問に思うことはないほど、レコードは充分売れてるんだよね(笑)。本当に売れなくなったら、僕はレコードを出すのをやめるよ。

『Echo』とその前の『Wildflowers』は、あなたの人生に起こっていたこと… 離婚とうつ… を扱った、非常に私的なアルバムでした。『The Last DJ』では、そのような個人的内容をレコードに意識的に残さないようにしたのですか?

意識的かどうかは分からないな。今は良くなって、昔の自分に戻ったようなんだ。自分のやってることを楽しむことが出来て、より集中することが出来たんだ。(楽曲として)書かなきゃいけないほどの大きな個人的問題がなかったと思うし。

あなたはうつの治療を受けていましたが、現在、薬は服用していないのですね。あなたは幸せなほど事がはかどっていますか?

そりゃそうだよ。

そのため最新作は『Echo』よりも簡単に出来たのではないですか。

そうなんだ。僕は幸せな時に、より創造的になれるようだ。エネルギーのレベルが上がるんだ。『Echo』は本当に、本当に創るのが大変だった。精神的に全てを注ぎ込んだかどうかは分からないんだけど、沢山の人があのレコードを良いって言うんだよ。

全ての中でも最高の作品だと思いますよ。

本当に?かなり長い間聴いてないんだよね。仕上げ終わったらそれを聴くことが出来なかったんだ。確か全体のうち1、2曲しか(ライヴで)演奏しなかったと思うよ。とにかく出来なかったんだ。ある日、妻(2001年に再婚した Dana)が『Echo』を聴いてとても良いと言ってくれた時には「本当に?」と言ったんだ。そしたら「そうよ、どんなに素晴らしいかビックリするわよ」って言われたんだよ。

でも、未だに聴き返してないんですね?

そうなんだ。(元々)自分のレコードは聴き直さないんだ。作り終えた頃には、あまりにも多く聴き返してるから、それを聴き直す気にはならないんだ。で、耳に入る時には良い意味での驚きだったりするんだ。でも時には「クソ、他の方法でやったのに」とか「あれをやっとけば良かった」って風になるんだ。

もしかしたら、間違いしか聴かないんですかね。

時にはね。でも、例えばラジオでかかる時には「いいな」と思うけどね。昔のシングルは本当に大好きさ。この前、車で”Breakdown”を聴いた時は「うわっ、ガキどもにしてはかなり上手くやってるな」なんて思ったよ。

【Depot Street:vol. 50~52&54】(2003. 2-4&6)掲載
 翻訳: Shigeyan