Depot Street: vol. 289 (Jan-2023)

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
 ☆ Tom Petty and the Heartbreakers と彼らの創り出す音楽を愛する みなさんへ贈ります!!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
 Mail Magazine: Depot Street        vol. 289(Jan-2023)▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

発行開始:1999年1月11日 / 配信:毎月11日 / 配信数:221通(1.10現在)

===================================
   ~ Hello TP&HB fans in Japan ~
===================================

☆☆ Best wishes for 2023 ☆☆

明けましておめでとうございます。本年も<Depot Street>を宜しくお願いいたします。
個人的に、昨年最大の音楽ニュースは『Live at the Fillmore 1997』の発売でしたが、先月号でさんざん語りましたので、次点の Taylor Hawkins 死去について語らせてもらいます。念のため、Taylorは Foo Fighters(以下FF)のドラマーで、昨年3月にツアー先のホテルで急逝しました。FFのリーダーである Dave Grohl が安心してドラムを任せられる力量だけでなく、音楽への探求心、人懐っこく優しい性格と三拍子揃った Taylor の死は大きな衝撃をもたらしました。しかし、FFはくじけずに、トリビュート・コンサートを9月にロンドンとロサンゼルスで開催しました。
このトリビュート・コンサートはゲストが凄すぎたのですが、特筆すべきは Paul McCartney、Queen、The Pretenders、Rush (Geddy Lee & Alex Lifeson)、Wolfgang Van Halen (Eddie Van Halen の息子、現 Mammoth WVH)という、同じようにバンドメイトを失った経験者が含まれていたことでした。特に Eddie 亡き後の Van Halen は、トリビュート・コンサートを行う計画があったものの企画段階でまとまらず、途中で頓挫してしまいました。Wolfgangは Taylor のトリビュート・コンサートで Van Halen ナンバーを見事にこなし「父へのトリビュートが出来た」と語っていました。FFのメンバーそしてゲストたちはお互い肩を組み合い、抱き合い、時に涙しながら、6時間にもわたるロングランを果敢にもこなしました。しかも2回。こういう光景を見ていると、仲間を失ったバンドメンバーたちの悲嘆の深さ、それを乗り越えるための方法の違いを考えさせられます。TP&HBについては、遺族とメンバーが一丸となってアルバムを丁寧に作り上げています。一ファンとして多くは望みませんので、せめてこれが続き、永遠に残る音楽が一枚でも多く増えることを願っています。

<Shigeyan>

2023年は Heartbreaker’s Japan Party 活動25周年目にあたる節目の年です。
元々は<Tom Petty and the Heartbreakers 来日公演実現>のために発足した団体ですが、現在は TP&HBの情報を日本語で発信し続け、日本のファンの持つ<熱気>を世界に伝えていくことを主目的として活動しています。四半世紀近くの間、果たしてどれだけの成果を残せたかはわかりませんが、日本の、そして最近では世界中のファンの方々の応援や励まし、各種SNSでの反応に支えられ、思いの強さに後押しされて今日まで続けてくることができました。あらためて感謝するばかりです。ありがとうございました。
コロナ禍のためオフ会やイベントの開催が困難な期間が続きます。ファンの方々が実際に顔を合わせて思いを交わす機会を作ることが我々の大きなミッションの1つでもありますが、それができずにいるのが現状です。しかし、どうにもできない状況をいつまでも嘆いていても仕方がありませんので、インターネット上で話題やネタを小まめに提供したりすることで、ファンのみなさんの興味に応え、共感を得て、繋がりを強くしていければと考えております。何がどのような形でできるかはわかりませんが、本年もメールマガジン並びにHeartbreaker’s Japan Party をどうぞよろしくお願い致します。

<TOSHI>

昨年の年初に「妄想気味に」願っていた『Live at the Fillmore 1997』が現実にリリースされました。当然ながら嬉しいのですが、ついに出るものが出てしまい、後はどうなるのだろうと若干感傷的になっています。ここはポジティブに妄想気味にでも希望を持たねば、ですね。リリースとは関係ありませんが、
そろそろ彼らの暮らした場所に出掛けて行きたいというのが密かな願いです。もちろん、ごく普通に楽しい時間を作り過ごす、というのは密かではなくて大いなる願いです。そのためにできることを引き続き考えていきましょう。何はともあれ、本年もお付き合いのほど、よろしくお願いします。

<Mayu>

===================================
   ~ TP&HB News ~
===================================

============ << Dec-2022 ~ Jan-2023 ~ Feb >> ================
 Jan-10: Scott Thurstonの誕生日 (1952年生まれ)
 Feb- 1: Mike Campbellの誕生日 (1950年生まれ)
_________________________________

☆☆☆ 『Live at the Fillmore 1997』続報

12月10日付 Billboard の Top 200(アルバムチャート)で初登場35位を獲得した『Live at the Fillmore 1997』ですが、翌週17日には192位までダウンしたのを最後にチャート圏外に消えてしまいました。ドイツでは<Top 100 Longplay>で12月12日に初登場9位にランクイン。翌週19日に61位となり、こちらも3週目には消えています。

12月14日にはプロモーションの一環で、”American Girl [Official Music Video]”の監督 Adria Petty、同作品の振付担当で出演もしていた Maya Taylor、<Tom Petty Nation>代表で司会役も務めた Keith Eveland の3人でライヴ配信を行いました。 bit.ly/3GKJRtT これを最後にプロモーションも一段落してしまったようで目立った動きはありません。

YouTube公式チャンネルは11月末に前述の”American Girl”をアップしたのを最後に新たな動画は投稿されていません。他のSNSでは12月17日に”It’s All Over Now” bit.ly/3k1NNxC 、23日に “Goldfinger” bit.ly/3GwZIeu を使ったクリップを公開しましたが、いずれも音と映像がシンクロしていない<口パク>です。

12月11日に注文していた4CD/6LPがようやく到着しました。4CDはブックレットが36ページで、2CDのように本体に貼りつけられた状態ではなく単体でした。2CDに使われていなかった写真が4枚、それ以外にセットリストなどを写したグループショットも追加されています。Joel Selvin の解説は同じ量で、写真の
キャプションが2箇所増えています。6LPのブックレットは28ページ。写真や解説、キャプションは4CDと同量ですが、セットリストなどのグループショットのデザインが異なり、セットリスト自体ががあまり写っていません。4CDの特典はピック、アクセスパス、ワッペンで、6LPには上記の他に3公演の
セットリスト、ファン向けニュースレターのレプリカ、LPサイズのナンバリング入りリトグラフでした。セットリストは A5サイズ程度の大きさで、1公演目(1/10)、3公演目(1/12)、4公演目(1/14)の物でした。曲の入れ替えやTPの使うギターやカポタストを付ける位置などが手書きで加えられていたりとマニア心をくすぐります。ニュースレターは表紙のFillmoreのポスターの写真(4種類あったうち人魚のもの)が、 TP&HBがプロモーションに使った半円の波型を並べた幾何学模様のポスターの画像に差し替えられていました。オリジナルのニュースレターは本文内にもポスターの画像が使われていましたが、レプリカはそこも同様に変えられていました。Fillmore側との何らかの権利関係の問題で使用できなかったのかと推測していますが、真相はわかりません。

前号でお伝えした2CDに掲載されたクレジットのミスは、4CD/6LP も同じデータを使用しているので当然そのままです。加えて、曲数が増えた分、ミスも増えています。大きなものとしては Ricky Nelson “Waitin’ In School”の作者名が<Jerry Livingston & Mack David>になっている部分。本当の作者は R&R界
では超有名な Johnny と Dorsey の Burnette 兄弟です。<Jerry & Mack>は1960年にRickyが発表したシングル”Young Emotions”の作者です。ちなみに Mack David は The Beatles がカヴァーしたことでも有名な The Shirelles “Baby It’s You”の作詞家です。なぜこんな間違いが起こったのでしょうか?それ以外にもスペルミスや間違いと呼ぶには微妙な勝手な置き換えや表記が見られます。

最後に、前号以降に確認できた掲載情報です。

*ウェブマガジン<Rock Cellar Magazine>12月号 
表紙: bit.ly/3GM0vcK  特集: bit.ly/3VVRfHp で取り上げられています。記事は Ryan Ulyate へのインタビューのみで構成されている短いものですが、彼がどういう姿勢でこのプロジェクトに臨んだか、目指した音作りはどのようなものだったかを語っています。

*<Mojo>23年1月号
アルバム広告と1ページの記事「UNEARTHED! PETTY’S TREASURES WITH JOHN LEE HOOKER AND MORE…」が掲載されていました。著者は Rolling Stone 誌の主任編集者で Tom Petty Radio のDJやTP&HB 関連の配信イベントでホストを務めている David Fricke です。

☆☆☆ Live Aid での TP&HB の映像公開

<Live Aid>の公式 YouTubeチャンネルが登録者数100万人を超えたことを記念して、1985年7月13日に開催された同イベントの映像を12月28日21時からノンストップで公開しました。映像は10パートに分かれていて、TP&HBの演奏は Part-8で見ることができます。 bit.ly/3Qo8Whq
2004年に発売された4枚組の公式DVD ボックスには”American Girl” “Refugee”が収録されていましたが、今回は”The Waiting” “Rebels”も含まれていて、これで当日演奏された4曲全てを見ることができるようになりました。特に女性ファンには不人気なモミアゲをたくわえた時期のTPを是非ご覧ください。

☆☆☆  Tom の別宅が売りに出される

カリフォルニア州マリブ市の Tom の別荘が売りに出されました。昨年12月14日に985万ドル(約12億8千万円)で販売開始されましたが、24日には買い手が見つかったと報道されました。高額の不動産としては異例の早さです。bit.ly/3GnaAeJ 約1,500平方メートルの敷地に建つ別荘は太平洋の目の前に面し、すべての部屋から太平洋を眺めることができます。不動産会社のサイトで様々な画像を見ることができます。 bit.ly/3GpIxvg

☆☆☆  Steve、Scott、Ron がレコーディングに参加

Zudi K というアーティストのレコーディングに Steve、Scott、Ron が参加しました。”I Gotta Know”という曲の音源が視聴可能となっています。この曲はSteve がプロデュースとドラム、ギターは Scott や Jason Sinay (元 The Dirty Knobs)、ベースは Ron、キーボードは Jeff Young (Jackson Browne)、コーラスに Lisa Fischer (The Rolling Stones) という豪華絢爛な布陣となっています。それに反して、Zudi K の情報はウェブに全くありません、一体誰なのでしょうか。なお、この曲のコーラスを聞くたびに The Clash の”Train in Vain (Stand by Me)”を思い出すのは私だけでしょうか。 bit.ly/3vNGAUy

☆☆☆  ランキング系*7題

1)Rolling Stone サイトが<The Best Box Sets of 2022(2022年のベスト・ボックスセット)>という記事を公開し、『Live at the Fillmore 1997』が含まれていました。他には The Beatles 『Revolver Special Edition』、Elvis Presley 『Elvis on Tour』、Prince and the Revolution 『Live』、Guns N’ Roses 『Use Your Illusion (Super Deluxe)』などが挙げられました。bit.ly/3QnSI7V

2)ミネソタ州の音楽サイト Music in Minnesota が<The 15 Best Songs about Florida to Get Some Sunshine in Your Life(人生に日光を当てるためのフロリダの曲15選)>というランキングを公表しました。順不同ですが、TP&HBの”Gainesville”が挙げられました。他には、Eric Clapton “Mainline Florida”、The Beach Boys “Kokomo”、Jimmy Buffet “Floridays”などが取り上げられています。フロリダ州の気候は温暖ですが、ミネソタ州は極寒の地で先月末の大寒波ではミネアポリス市で摂氏-24度を記録しました。bit.ly/3ZgbB0J

3)ロック+メタル情報サイト Loudwire が<Why 1991 Had the Best 6-Month Release Period in Rock + Metal History(ロック・メタル界の歴史において、なぜ1991年が最高な6か月間のリリース時期だったか>という記事を掲載しました。1991年6月から11月までの間に名作が数多く発表された、ということで、TP&HB 『Into the Great Wide Open』が堂々とランクインしました。ちなみに他の名作は、Metallica『Metallica』、Pearl Jam『Ten』、Guns N’ Roses『Use Your Illusion I&II』、Red Hot Chili Peppers『Blood Sugar Sex Magik』、Nirvana『Nevermind』、 U2『Achtung Baby』などでした。bit.ly/3GrB5Q6

4)このコーナーではお馴染みの Ultimate Classic Rock(以下UCR)サイト。少し前の記事ですが、<The 20 Best New Songs From Greatest Hits Albums(ベスト盤での最高な新曲20選)>というランキング(順不同)を載せていて、TP&HB では”Mary Jane’s Last Dance”が含まれていました。他には、Bob Dylan “I Shall Be Released”、Earth, Wind & Fire “September”、Donna Summer”On the Radio”、Stevie Wonder “That Girl”などがランクインしました。bit.ly/3Cv0hUL

5)UCRといえば安易なランキング… ということで、新年には<35 Albums Turning 35 in 2023(2023年に35歳となるアルバム35枚)>という記事を公開しました。Traveling Wilburys『The Traveling Wilburys Vol. 1』が1998年10月25日発売ということでランクインしました。bit.ly/3Gq963q

6)UCRの安易な記事はまだ続きます。次は<40 Albums Turning 40 in 2023(2023年に40歳となるアルバム40枚)>。TP&HBは登場しませんでしたが、Stevie Nicks 『Wild Heart』(1983年6月10日発売)に貢献したことで Tom の名前が挙がっていました。bit.ly/3X7yT6Y

7)UCRは容赦ありません。<45 Albums Turning 45 in 2023(2023年に45歳となるアルバム45枚)>というランキングまで発表しました。ここでようやく本家が登場しました。1978年5月2日発売の『You’re Gonna Get It!』です。bit.ly/3Zko57G

☆☆☆  John Mayer、あの曲のインスピレーションは

John Mayer は”Free Fallin'”の名カヴァーを誕生させたアーティストと言えると思いますが、数多くのセレブたちと浮名を流してきたことでも知られています。2009年の『Battle Studies』収録の”Half of My Heart”では当時交際していた Taylor Swift とのデュエットを披露しましたが、そのアイディアはTP&HB
の”Stop Draggin’ My Heart Around”にあったとの記事が掲載されました。Johnは、Petty 役の自身に対して Taylor が「Stevie 役として最適だ」と思ったとのことでした。 yhoo.it/3WW8YzC

☆☆☆  Arcade Fire、”Free Fallin'”をカヴァー

カナダ出身のロック・バンド Arcade Fire が、2022年11月16日のロサンゼルス The Forum 公演で”Free Fallin'”のカヴァーを披露しました。ロサンゼルスにちなんだ選曲とのことで、「全部どう弾くのか、まだ分からないんだけど」と前置きした上でアンコールで演奏しました。 bit.ly/3VS76qi

☆☆☆ Rick Rubin 書籍出版

1月17日に Rick Rubin の書籍「The Creative Act: A Way of Being」が、Penguin Press から出版されます。bit.ly/3IyNnJb
彼のキャリアは1984年にニューヨークで設立したインディーズレーベル<Def Jam Recordings>から始まり、40年近く経った現在、グラミー賞を10回も受賞するプロデューサーにまで登り詰めています。今回出版する本は創作活動に対しての彼の考え方や経験を伝えるもので、「ミックスの方法はどうだこうだ」といった技術的なアプローチではなく、より精神的な側面から語った内容のようです。TPとの活動に触れられているかどうかは現時点で不明ですが、情報が分かりましたらお伝えしたいと思っています。 amzn.to/3WXUK12

<Shigeyan / TOSHi / Mayu>

===================================
   ~ Live at the Fillmore 1997 ☆ Special ~
===================================

<Mini review of 『Live at the Fillmore 1997』> by TOSHi

私にとってライヴアルバムの愉しみの1つに収録されたカヴァー曲の存在があります。ミュージシャン/バンドは突然世の中に現れるのではなく、その多くが先人たちの残した遺産を受け継ぎ、自分なりに解釈するという過程を経て新しい詞と曲を生み出し、自らのアイデンティティを確立していきます。カヴァー曲からは彼らのルーツを窺い知ることができます。そして同時に遺産をどのような形で受け継ぎ表現できているか、演奏者としての技能を知ることもできます。オリジナル同様、あるいはそれを超える演奏力があるのかどうか。再現する力はあっても単純にトリビュートバンドのようにコピーで終わるのか。ミュージシャンにとっては試金石のような存在がカヴァー曲だと私は思っています。

Tom Petty and the Heartbreakers が残してくれた数々のカヴァー曲は彼らがどのように音楽と向き合ってきたかを叙述に語ってくれていました。今回の『Live at the Fillmore 1997』でも先人たちの遺産の見事な継承ぶりを聞かせてくれています。そして、オリジナルもカヴァーも、とにかくどの曲を演奏していても楽しそうです。TP&HB というフィルターを通して、50年代~70年代に生まれた名曲(彼らが単なる音楽ファンだった頃からアマチュア時代に好み、影響を受けたであろう曲)と珠玉のオリジナル曲を、会場に詰めかけた観客の熱と共に25年後の我々に届けてくれた<過去からの贈り物>だと思っています。

さて、固い話ばかりでもつまらないので、このメルマガらしい小ネタを4CDを例に少々。特に記載はありませんでしたが、収録曲の中に2009年の『The Live Anthology』で既発の音源が5曲(”Jaminn’ Me” “Diddy Wah Diddy” “I Want You Back Again” “Friend Of The Devil” “County Farm”)ありました。2/6の
“Green Onions”も『The Live Anthology』に入っていますが、今回は1/31の音源が使用されています。こちらの方が9秒長いですが、演奏の長さではなく最後にTPの「Booker T. & MG’s」の一言が入っているため違いがでています。

曲間に収録されている TPのコメント(MC)についての小ネタも少し。手元にある1/31、2/1、2/6、2/7の4公演のブートレッグ音源で確認したところ、14あるMCのうち8つの日付が判明しました。その中で面白いのは CD-2/Track11 “Let’s Hear It For Scott And Howie”。TPがHowie & Scottを紹介しているのですが、Howie は2/1の”Little Maggie”の演奏前のもの。Scott も同じ部分を使ってはいますが、それは前半のみで後半は2/6の同曲演奏前のMCの最後部を持ってきてつなげています。グダグダな感じのTPの言葉をすっきりさせるための処理だと思います。

もう1つ、CD-1/Track13 “Let’s Hear It For Mike”。Mikeを紹介するMCですが、これもつなぎあわせで、前半は2/6の”Waitin’ In School”と”Goldfinger”の曲間のMC、後半は2/1の”I Want You Back Again”と”Slaughter On Tenth Avenue”の最後部を使っています。2/1のMCの前半は Mike の誕生日を祝うTPのコメントとThe Heartbreakers の演奏で”Happy Birthday to You”を歌う声が入っているのですが、正式に発表されなくてちょっと残念です。しかし、こんな細部にまでこだわっているなんて非常に驚きました。

またカヴァー曲の話題に戻ります。『Live at the Fillmore 1997』に収録された先人たちの遺産を(別の形でですが)私も受け継ごうと思い、オリジナル版の音源を集めたコンピレーション『The Roots of Live at the Fillmore』を勝手に編纂してしまいました。同時にオリジナル版の演奏シーンばかりを集めた YouTube のプレイリストも作成、両方を楽しむ日々を送っています。興味のある方は是非真似をしてみてください。

最後に、ブックレットに掲載されたカヴァー曲のクレジットの誤りの多さがあまりにも酷く目を覆うばかりなので、TPの「本当の意味での遺産」を受け継いだ<Tom Petty Estate>に対する苦言を書こうと思ったのですが、年始ということもありやめておくことにしました。彼らは以前の作品でも大量の誤記を
発生させておりスタッフの質に疑問を持たざるを得ない状況でしたが、今回の件でその思いが確信に変わりました。発表されたアルバムがとても良い内容なだけに一点の曇りが残念でなりません。音楽に詳しい、まともなブレーンの登用を願ってやみません。

=================================
   ~ Benmont Tench + Ryan Ulyate インタビュー(Variety) ~
=================================

これをお読みになっているみなさんは『Live at the Fillmore 1997』の余韻に浸っているところでしょうか。その余韻を高めるようなインタビューを今月号でもお届けします。Benmontとプロデューサー Ryan Ulyate への最新インタビューで、バンドの昔のエピソード、制作の秘話、今後の計画など興味津々な
内容です。アルバムを聴きながらご堪能ください!
 ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~

Q:1997年当時、Heartbreakers は(Fillmoreで)20晩にわたって全く違うセットリストを演奏しました。
 ────────────────────
BT:「もう(このセットリストで)決まりだ。自分たちがここで何をやるか分かる。今夜、何が起こるか分かるよ」なんて感じたことはなかったな。それが本当に嬉しかったんだ。僕たちは前からなりたかった(形の)バンドになっていたよ。それはセットの中盤で(新たな曲を)突然引っ張り出してくるとか、セットに加えるためにリハーサルで3~4曲覚えるようなバンドだ。

Q:それまでは、Elvis Costello & the Attractions のような自由奔放なアプローチに嫉妬していたのですね。
 ────────────────────
BT:ああ、他の小さなバンドでも大きなバンドでも…(セットに)変化をつけて「ねえ、これを入れてみよう、楽しくなるよ、試してみよう、挑戦してみようよ」とするバンドにね。(Attractionsの)Steve Nieve が頭の中から全く別のモノを引き出して、前に見たときはピアノで弾いていたのを Vox Continental
(オルガン)で弾く、それを見るのが好きだった。それがやりたかったんだ…(Heartbreakersの)初期は時々そうやっていたけど、Fillmoreの頃にはアリーナのステージではそういうことをやっていなかった。Tomにはそうしない妥当な理由があったんだ。一つは「セット(リスト)は、アルバムや演劇のように、感情的な弧を描くように練られたものにするべきだ」とTomが考えていたこと。つまり、頭の中にあるものを(思いついたままに)ただ引っ張り出すだけではいけない、という意味だった。
また、彼は観客に対して責任を感じていたんだと思う。観客にジュークボックス的に音楽を提供するのではなくて… 彼らは駐車場代、子守代、チケット代、旅費などの大金を使って、彼らの好きな曲を聴きに来ているのだから、と。だから、Bruce (Springsteen) や (The Grateful) Dead のように長時間のショウをしない限り、即興性を強調する機会はなくなるんだ。でも、Fillmoreで20日間演奏すると決まり(即興性を盛り込むことが)Fillmoreで演奏する理由のすべてになったんだ。

Q:20回のうち最後の6回をレコーディングし、(Ryan) Ulyate と共同プロデューサーの Mike Campbell でベストテイクを探したのですね。
 ────────────────────
RU:最初の14回で演奏された曲には『Live at the Fillmore 1997』に収録されなかったものもありますが、最後の6回で一度でもバンドが演奏した曲は4時間のデラックス・エディションに58曲(うち35曲がカヴァー)が収録されています。

Q:『Live at the Fillmore 1997』は4枚組と2枚組のCDがありますね。
 ────────────────────
RU:「入門編」と「上級編」のようなものです。4時間(4枚組)であっても、長編コンサートとしての流れがあるんです。実際、最終公演はアンコールに次ぐアンコールで4時間以上になりました。アルバムの構成を考えるときには「これはちょっと長すぎる」ということがありました。ある曲を見つけて「これはどこに入れようか」と悩むことも度々でした。というのも、Tom から学んだことの一つは「曲順やストーリー、満ち引きなど、全てがうまく調和していないといけない」ことでしたから。(6回のコンサートで)演奏された全ての曲を収録し、全体としてその流れを受け止めたいという果敢な人にも、なんとか応えられたでしょう。

Q:収録曲の多くは Petty のステージで二度と聴けませんでした。
 ────────────────────
RU:Fillmore 以降、”Gloria”は(例外で)数年間アンコール曲の定番となりました。他のカヴァー曲はどれも、そこまで愛され続けなかったんです。

Q:セットに含まれるレア曲であなたが好きなのは?
 ────────────────────
RU:(Bill Withersの)”Ain’t No Sunshine”はいまだに圧倒されます。「I know, I know, I know, I know」(というフレーズ)が永遠に続いて。とても楽しいんです。もう一つは “Angel Dream No.2″の出だしで、いくつかのコードが聞こえてきて、Tomがまさに演奏しようとしているときに、誰かが、「Heartbreakers Beach Party」と叫ぶと… Pettyは(Angel Dream No.2)の代わりにその曲を演奏するようにしたのです。

Q:70年代(バンド)初期におけるカヴァー曲の扱いを教えてください。
 ────────────────────
BT:Heartbreakers はカヴァー曲の演奏が大好きなバンドだったから、ツアーの初期には(James Carrの)”The Dark End of the Street”を演奏したんだ。James Brown の”Good, Good Lovin'”も演った。Ricky Nelson の”Waitin’ in School”はライヴで Stanと一緒に1~2回演ったかな。もちろん、リハーサル中は(カヴァー曲を)ずっと演ってたんだ。リハーサルをしないために、カヴァー曲をたくさん演奏してたよ!

Q:Fillmore に始まった一か所でのロングラン公演は全部 Petty のコンセプトだったのですね。
 ────────────────────
BT:リハーサルをする必要もなく、好きな曲を演奏できた。それに、観客もついてきてくれたんだ。”Goldfinger”… これはリハーサルが必要だったけど、演奏すれば、彼らは大喜びしてくれた。”Slaughter on the 10th Avenue”もそうだった。”Satisfaction”は間違いなくリハーサルが必要なかった!It’s All Over Now”もリハーサルは必要なかったと思う。アルバムで”Bye Bye Johnny”と呼ばれている曲はリハーサルするべきだった。というのも、Tomは”Johnny B. Goode”を歌い始めたのだけど、1番の後は歌詞をはっきり覚えていないから”Bye Bye Johnny”のようなものを歌ったんだ。これもリハーサルが必要だったのは間違いないな。他の曲は、彼が弾き始めると僕たちもそれに合わせるんだ。どうやったら良いか分かってるから、ただただ楽しかったよ、分かるだろ?

Q:この能力は Bob Dylan とのツアーで鍛え上げられたのですね。
 ────────────────────
BT:Bob と一緒のとき、僕らは何でもうまくいったんだ。Bobとのリハーサルで一番多く(時間を)費やしたのはエンディング(を合わせること)だった。Bob と初めてオーストラリアとニュージーランドと日本に行ったとき、確か(リハーサルに)1週間くらいかけたよ。エンディング、エンディング、エン
ディングという調子で。うまく曲を終わらせるのは(曲そのものの演奏より)結構厄介なんだ。でも、曲に関しては “In the Garden”のような無名の曲でない限り、Bobの曲に間に合わせられたよ。とにかく走り抜けたんだ。それでもツアーでは、一度もリハーサルしたことのない “Desolation Row”を Bob が演奏したけどね。

Q:(Fillmoreで)条件が唯一異なったのは『Wildflowers』のツアーから加わった Steve (Ferrone) でした。
 ────────────────────
RU: 彼がバンドに溶け込むために、いろいろな変化球を投げていったのが良かったんです。彼はそこにいて、変化球を(しっかり)受け止めて回していったんです。試行錯誤みたいなものでした。

Q:最初はあなたも多少不安だったのですね。
 ────────────────────
BT:Steveは何だって出来るけど、彼が10代の頃から我々と同じように(カバー曲を演奏して)やってきたことは知らなかった。”Breakdown”や『Hard Promises』の”Nightwatchman”(のように構成のはっきりしている曲)を演奏するならば、レコードのグルーヴを再現しなきゃいけない。グルーヴを一から作り出すんじゃなくて。彼には同情したよ…あの時点で彼とは大きなツアーを1回行っていたけど、彼はまだバンドの全曲を知らなかったから。バンドにも同情したんだ、彼は Stanとは根本的に違うドラマーだからね。Steveに合わせるためには、自分のグルーヴの抑揚を変えなきゃいけないことも分かっていたから、持ちつつ持たれつつだったんだ。

Q:別に Ferrone のことを歓迎しなかった訳ではないですね。
 ────────────────────
BT:(Steveが演奏した)The Average White Band の『Cut the Cake』は、これまでで一番好きなアルバムの一つ、とんでもないアルバムだ。

Q:Fillmore は Scottが加入し、Howieが脱退する前の編成でしたね。
 ────────────────────
RU:このラインアップには3人のバック・シンガーがいます。素晴らしいシンガーとして元々いた Benmont、そこに驚異的なシンガー Howie が加わり、さらに Scott もです。『Fillmore』ではヴォーカルのレベルが本当に高くて、”Time Is on My Side”や The Byrds のカヴァー曲まで、素晴らしいハーモニーを持つ曲を全て演奏できたのです。”Eight Miles High”を聴くと (Roger) McGuinn と共に Howie・Scott・Benmont が、Byrds の残りのメンバーとしてかなり良い仕事をしています。

Q:当時の Petty は Fillmore のライヴがバンド史上で頂点だったと発言していました。でも、Heartbreakers の歴史はそれから25年ありましたから、彼がその感情をずっと持つとは誰も思っていませんでした。
 ────────────────────
BT:自分にとってニューヨークの Beacon Theatre(の連続公演)は Fillmore 以上に音楽的なハイライトだった。なぜなら、僕たちは(バンドとして)より長く一緒にいたから、お互いの演奏をより知っていって、それをグルーヴに忍び込ませられたんだ。しかし、連続公演をやるためにはバンドがアリーナサイズから(クラブに)降りてこなければならなかった。会場にいた誰も知らなかっただろうけど、Fillmoreでの”Free Fallin'”や”You Don’t Know How It Feels”の Tom の歌い方はアリーナとは違うし、僕たちの演奏の仕方にも違いがあったのは確かだ。(Fillmoreでの)それは、バンドが本当に素晴らしく演奏している瞬間で、ほんの少し、時にはそれ以上に大胆に挑戦しているんだ。(Fillmoreでの演奏は)完全に抜きんでていて、僕らの人生において信じられないような、ユニークな体験だった。Fillmoreで20回の連続公演をしたバンドはそうそういないと思う。殆どのバンドはどこでも20連荘したことがなかった。1~2年後に Bruce (Springsteen) が(ニュージャージー州)Meadowlands Arena で15回の連続公演を行ったけど。でも、僕らのバンドは(アリーナではなく小さな)会場でみんなの白目を見ることができたし、そんな一体感で演奏するのはすごいことだった。

Q:それでも『Live at the Fillmore』は究極のライヴ(アルバム)プロジェクトではないのですね。
 ────────────────────
BT:それはもう果たされているよ。僕たちのライヴ(アルバム)で一番好きなのは13年前に編集した『The Live Anthology』だ。ラジオ収録のための”Breakdown”のようなキャリア初期から、Stan も Steve も入っているし、『Wildflowers』もあるし、1枚目(のアルバム)もある。あらゆるものが含まれているんだ。

Q:あなたと Petty は『Live Anthology』を編集していたとき、Fillmore のテープを全て聴きました。そのときから、 Fillmoreだけのボックス(セット)を出すのが彼の希望だったのですね。
 ────────────────────
RU:デラックス盤に入っている数曲…”Jammin’ Me”や”Diddy Wah Diddy”は『The Live Anthology』にも入っていました。その当時も(Fillmoreの曲を)もう一度、深く掘り下げるべきだと思いました。『The Live Anthology』は、40年かけて一つの物語を作り上げようとしたものです。今回は20回の公演から全体の物語を作ろうとしているのです。

Q:Adria Petty は次のアーカイブ作品は決まっていないと話していました。
 ────────────────────
RU:これまで、私は次の作品についてはいつもTomに敬意を払っていました。今の時点では、私は(遺された)首脳陣を信頼しています。この先どうするかという方向を与えてくれる(Tomの)家族を信頼しています。そして、Tomに最も近い中心グループの人々は、彼の遺産を守り、保存するために本当によく頑張っています。私はそれがとても喜ばしいです。

Q:メンバーたちが参加した(衛星ラジオ局)SiriusXMスタジオでの
 試聴会の時、いろいろな感情が出ていたのが読み取れました。
 ────────────────────
RU:音楽の素晴らしいところは、不滅であることです。この前(The Beatles)『Revolver (Special Edition)』で”I’m Only Sleeping”を聴いていたら、まるで (John) Lennonと一緒に部屋にいるような気分になりました。そこに瞬間移動したんです。(そういう体験について)Benmont が宗教ががったことを言っていましたが、まるでこの世界から抜け出して、時間を超越した場所にいる感じです。私はそれが大好きなんです。私は(手掛ける作品で)いつもそこに行こうとしているのです。(そこに行けるような)作品に取り組めることは奇跡なんです。

Variety インタビュー(2022年11月26日公開)
Tom Petty bandmate and producer look back at a unique concert run that makes ‘Live at the Fillmore’ one of rock’s best live albums
bit.ly/3GoDKtT

<Shigeyan>

=================================
   ~ Information ...お知らせ ~
=================================

次回オフ会の予定は未定です。本来は2月末の開催予定ですが、もう少し先に延期させてください。暖かくなった春ごろにチャンスがあると良いのですが。決まりましたら、お知らせしますので、よろしくお願いします。

<Mayu>


☆ LINKS ☆
[Here Comes A Heartbreaker!] https://herecomeshb.jp/
[Heartbreakers Japan Party] https://heartbreakers.jp/
Facebook page ☆ https://facebook.com/heartbreakers.jp/
Twitter☆https://twitter.com/heartbreakersjp
Instagram ☆ https://instagram.com/heartbreakers_jp/
YouTube ☆ https://www.youtube.com/channel/UCeH2NEatkQplr7XJQOnmx1A

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

☆ about 【Depot Street】 ☆
“Depot Street”は TP&HB の前身である Mudcrutch のシングル曲のタイトル。
「Street=通り」の言葉に、私たちとみなさんの間を情報が行き来して、
「アクティブなメールマガジンになるように」と願いを込めて名づけました。
_________________________________
【Depot Street】へのご意見・ご要望など、みなさんからのメールを
お待ちしております。メール宛先→ hbjp@heartbreakers.jp
_________________________________
新規登録および購読解除は下記のURLからお願いします。アドレス
変更の際は旧アドレスの解除&新アドレスの登録をしてください。
https://www.mag2.com/m/0000011264.html
_________________________________
Mail Magazine 【Depot Street】 (Jan. 11, 2023/vol.289)
Heartbreaker’s Japan Party presents.
原稿・制作・編集: Shigeyan/TOSHi/Mayu

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇