Tom Petty’s Los Angeles（2024）

随分前になりますが、LA Weekly（web）に「Tom Petty’s Los Angeles」という記事が載っていました。文字通りL.A.の Tom 所縁の場所を紹介する内容で、いつか行きたいと興味深く読みました。レコード契約を求めてゲインズヴィルからロサンゼルスにやって来た Tom は「着いてすぐに恋に落ちた」という L.A.に住み続け、その街にインスパイアされた曲を作り演奏してきました。私たちの頭の中にも L.A.は Tom の愛した街として深く印象付けられています。

2024年、久しぶりの L.A.でいくつかの所縁の地めぐりをしました。時間の経過とともに「跡地」が増えてきましたが、それでも TP&HB に思いを寄せつつ楽しむことができました。ただそれだけなので完全に自己満足の世界ですが、記録として残しておきたいと思って過去に訪れた際の写真や情報も加えて所縁の場所をリスト化しました。誰かの何かの参考になれば（ならないか）嬉しいです。

地図（画像）および行き方は参考情報ですので正確なことが知りたい場合はご自身で確認ください

はじめに

雰囲気だけでも伝わればと場所ごとに小さな地図をつけてみましたが、時間があれば一度、LA全体の地図（⇒）も眺めてみてください。このリストは主にハリウッドなどの市内が多いですが、Tom が実際に住んでいたのは、80年代～90年代中頃まではエンシノ、その後はマリブです。どちらも市内からは少し離れた場所（L.A.と言って思い浮かぶ街の景色とは違うかも）で、Tom が市内の喧騒を避けて落ち着いた暮らしをしていたのが伺えます。

「L.A.は広いので車がないとどこにも行けない」などと言われますし、安全性の観点からも自動車利用が前提の場所は多いです。とはいえ、公共交通は発達しているので、バス・地下鉄を使って行ける場所もそれなりにあります。このレポートでも実際に利用した経路を記していますので、よろしければ参考にしてみてください。もちろん、安全には十分に気をつけて。

Related Places

Hollywood Walk of Fame

エンターテインメントの世界で功績のあった人に贈られ、ハリウッドの歩道に埋め込まれる星形のプレート。TP&HB は1998年に授賞が決まり1999年4月28日にセレモニーが行われた。［Star#2133］

7018 Hollywood Blvd, Los Angeles

位置は「Hollywood Blvd の南側歩道でハリウッド・ルーズベルトホテルの少し先（西方向）」
近くに Johnny Depp の星もある

［1999年、2001年、2024年訪問］

Shelter Recording Company Inc.

Mudcrutch がレコード契約を結んだ Shelter Record のオフィスとスタジオがあった場所。ハリウッドとはいえ、華やかな方ではなく東の端（チャイニーズシアターからは徒歩52分の距離感）。周辺はエスニック地区になっている。

オフィスはバンドの溜まり場であり、夕方になると Tom はここに行き Denny Cordel とレコードを聴いて過ごしたという。Tom が居住していたのは目の前のモーテルだった。

5112 Hollywood Blvd, Los Angeles

Metro Bus 180/206/217 の Hollywood / Normandie 停留所から徒歩2-3分

［2024年訪問］

Winona Motel

Winona Motel は1955年に建てられた客室25部屋のモーテル。（↓こちらは当時のポストカード）

ゲインズヴィルから L.A.に来た初期の頃に Tom たちが居住していたモーテル。他にも近くの Hollywood Premiere Motel などの安モーテルに住んでいたようだ。

Shelter Records のオフィスから通り（Hollywood Blvd.）を挟んだ向かい側にある。Shelter の共同所有者である Leon Russell は Tom を拾うためにロールスロイスでやって来ていたという。まさにミスマッチ。

今は Hollywood Inn Express North となっているが、無期限で閉鎖中。趣味の悪い装飾になったのは2012年以降と思われる。

5131 Hollywood Blvd, Los Angeles

Metro Bus 180/206/217 の Hollywood / Normandie 停留所から徒歩3-4分

［2024年訪問］

Travelodge Hotel

1枚目のアルバムをレコーディングしていた当時に Tom が妻の Jane と住んでいたホテル。長女 Adria が生まれてすぐの頃で、彼らはホテルのタンスの引き出しに赤ちゃんを寝かせていたという。

今は閉鎖されているが、塗りつぶしてある看板に「Travelodge Hotel」の文字が見える。調べると2021年くらいまでは営業していたらしい。

場所はハリウッドの（Shelter オフィスよりさらに）東端で周辺には大きな医療施設が点在している。

1401 N. Vermont Ave, Los Angeles

Metro B Line の Vermont / Sunset 駅から徒歩2-3分のところ、Vermont Ave 沿い

　［2024年訪問］

Ben Frank’s

Ben Frank’s は1962年に開店したコーヒーショップ／レストラン。24時間営業でサンセットストリップに位置することから多くのアーティストも利用していた。1996年閉店。2007年から Mel’s Drive-In となって建物はそのままに今も営業している。

場所柄から Tom たちが利用した可能性もあるが、Ben Frank’s については嘘か誠か分からない話が伝わっている。

Tom たちがレコード会社を探しにゲインズヴィルから L.A.にやって来たとき、ダイナーから出て外の電話ボックスで市内のレコード会社の住所と電話番号が書かれたリストを見つけた、という話はよく知られているが、そのダイナーがこの Ben Frank’s と言われている。さすがに今は電話ボックスはない。

8585 W. Sunset Blvd, West Hollywood

Metro Bus 2 の Sunset / Sunset Plaza 停留所から徒歩2分

［2024年訪問］

Concert Venues

Whisky a Go Go

ウエスト・ハリウッドの Sunset Blvd にある超有名ナイトクラブ（ライヴハウス）。1964年1月にオープンし、The Doors、The Byrds、Love といった L.A.のバンドがここに出て有名になっていった。

TP&HB はデビュー直後の1977年に数回出演。3rd アルバム『Damn the Torpedoes』のツアーでは、The Forum 公演（1980年1月20日）の翌日に Whisky でも公演している。キャパは17,500人と500人。それだけ急激に売れていったということだろう。

8901 W. Sunset Blvd, West Hollywood

Metro Bus 2 の Sunset / Clark 停留所から徒歩2分
Metro Bus 16/105 の Sunset / San Vicente 停留所から徒歩2分

［2013年訪問］

The Forum

多目的の屋内アリーナで、1967-1999年まで NBA の L.A. Lakers の本拠地だったことで知られている。客席数17,500で大規模なコンサート会場としても有名。2022年からネーミングライツで KIA Forum となっている。

TP&HB も度々ライヴを行っている。最後は2014年10月『Hypnotic Eye』ツアーで使用。『Greatest Hits』の裏ジャケに使われているのが Forum のステージ写真。

3900 W Manchester Blvd, Inglewood

L.A.の南西、ロサンゼルス国際空港の右側に位置する Inglewood 市にある
あまり治安のよい地区ではないので車が基本

［1997年訪問（ライヴではありません）］

Wiltern Theatre

Pellissier Building および隣接する Wiltern Theatre は1931年に建てられたアールデコ調の12階建てのビルディングで地区のランドマークとなっている（この辺りはコリアンタウン）。

建物の劣化が進んだ1980年代初めに大規模なリノベーションが行われ、オフィスビルは1983年までに改修が終わったものの、劇場の改装にはさらに2年間を要した。再オープンは1985年5月1日。

ご存じの通りライヴ・アルバムおよび映像にもなった『Pack Up The Plantation Live!』が収録されたのがこの Wiltern Theatre。1985年8月6日と8月7日に音源と映像が記録された。

＜Wikipedia の Wiltern Theatre の項目にもこんな記載がある＞
On August 7, 1985, Tom Petty and the Heartbreakers played a show at the theater, and most of the live show was subsequently used for Petty’s first official live release Pack Up the Plantation: Live! The concert was also filmed.

3780 Wilshire Blvd, Los Angeles

Metro D Line の Wilshire / Western 駅を上がってすぐ、Wilshire Blvd と Western Ave の南東の角

［2024年訪問］

Grand Olympic Auditorium

1932年のロスアンゼルス・オリンピックでボクシングおよびレスリングの会場となり、その後はボクシング・プロレスリングの興行、コンサート会場として使用された。2008年頃から建物はそのままに韓国系キリスト教会「Glory Church of Jesus Christ」の施設となっている。

2000年9月に Rage Against the Machine がラストライヴを行い、後に『Live at the Grand Olympic Auditorium』としてリリースされたことで知られている。

2002年10月の『The Last DJ』リリース直後に、TP&HB はこの会場でアルバム丸ごとを演奏するライヴを行い、同時に映像も収録されてDVD「Live at the Olympic」として発売された。

1801 South Grand Ave, Los Angeles

L.A.ダウンタウンの Grand Ave を南に下ってフリーウェイを超えたところ

※実際に行ったことはありません

［未訪問］

Fonda Theatre

TP&HB が2013年にニューヨークとロサンゼルスでレジデンシー・ライヴ（連続公演）を行った会場。キャパシティ1,200人（1階はスタンディング）の小ぶりな会場で6月3日～11日までの間に6公演が行われた。

1926年に元々は劇場として建てられたが、1945年頃から長らく映画館として使用されていた。1985年に俳優 Henry Fonda の名前を冠した劇場として再オープン。現在は主にコンサート会場として使用されている。

6126 Hollywood Blvd, Los Angeles

Metro B Line の Hollywood / Vine 駅から徒歩4分

［2013年訪問］

Hollywood Bowl

ロサンゼルスのみならずアメリカでも有名なコンサート会場。ハリウッドの丘（山）に作られた野外劇場で席数18,000人。

The Beatles、The Rolling Stones、The Beach Boys、The Doors など数多くの伝説的なライヴが行われてきた。あわせてライヴ・アルバムも多数発売されている。

TP&HB も度々ライヴで使用している。2017年に行われた40周年記念ツアーのラスト3公演がここ。残念ながら Tom が最後にライヴを行った場所になった。

2301 N Highland Ave, Los Angeles

Metro B Line の Hollywood / Highland 駅から徒歩20分（上り坂）、駅近辺からシャトルバスもある

［1999年、2006年訪問］

Recording Studios

Sound City Studios

録音されたアルバム・楽曲

Damn The Torpedoes / Hard Promises / Let Me Up / Wildflowers / She’s The One

TP&HB にとって出世作となった3rd アルバム『Damn The Torpedoes』のレコーディングで使用。スタジオの人気も高まり、数多くのゴールド・プラチナディスクを生み出している。

1969年オープン。2011年に閉鎖（2016年まで別経営）の後、2017年に再オープンしている。

15452 Cabrito Road, Van Nuys

郊外なので自動車になるが、あえて公共交通を使うとすると下記ルートもあり
Metro B Line の North Hollywood ⇒ Metro Bus 152、Roscoe / San Diego Fwy 停留所から徒歩10分

［2001年訪問］

Record Plant Recording Studios

録音されたアルバム・楽曲

Long After Dark

1968年にニューヨークで設立され、評判を受けてロサンゼルス、サウサリートにもスタジオをオープン。快適なスタジオが売りとなり大きな成功を収めたが、1980年代にロサンゼルス以外は経営が変わっている。

『Long After Dark』のレコーディングに加え、『Long After Dark (Deluxe Edition)』発売プロジェクトで使われている「French TV」の映像が撮影された場所！

と意気込んで行ったものの、1986年に今の場所に移転していた。よって、TP&HB が利用したのは移転前の 3rd Street の方だった。写真の L.A.のスタジオは2024年に閉鎖されたという情報あり。

1032 N Sycamore Ave, Los Angeles

Metro Bus 2 の Sunset / Orange 停留所から徒歩13分

Original Place: 8456 West Third Street, Los Angeles

［2024年訪問］

Wally Heider Recording

録音されたアルバム・楽曲

Long After Dark

United Western Recorders で働いていた Wally Heider がカフエンガ通りに Studio 3 を作り Wally Heider Recording を設立。The Beach Boys や Crosby, Stills & Nash のレコーディングで高い評価を得た。1969年にはサンフランシスコに Wally Heider Studios を作り、数々の名盤が制作されたこともあり、徐々にそちらがメインになっていった。L.A.のスタジオは1967-1984年まで運営されていた。

TP&HB は『Long After Dark』の一部の曲をレコーディングした。

1604 N. Cahuenga Blvd, Los Angeles

Metro B Line の Hollywood / Vine 駅から徒歩9分

［2024年訪問］

Sunset Sound Recorders

録音されたアルバム・楽曲

Don’ｔ Come Around Here No More

1958年に作られたスタジオは当初はディズニー映画の音声録音に使用されていた。やがて音楽制作へとシフトしていき、200枚を超えるゴールドディスクを生み出すことになる。

その内容が凄すぎる。恐ろしく凄い場所ということだ。

including hit albums for Elton John, Led Zeppelin, Van Halen, Toto, parts of Prince’s Purple Rain, the Rolling Stones’ Exile on Main St., Neil Young’s After the Gold Rush, the Beach Boys’ Pet Sounds, Linda Ronstadt’s Don’t Cry Now, parts of Guns N’ Roses’ Chinese Democracy and Janis Joplin’s posthumously-released Pearl. In addition, the Doors recorded their first two albums, The Doors and Strange Days, at the studio. Idina Menzel recorded her vocal track for the song “Let It Go” for Disney Animation’s 2013 film Frozen at the studio.

Tom が使用したのは「Don’ｔ Come Around Here No More」のバッキングコーラスの録音だと思われる。

6650 Sunset Blvd, Los Angeles

Metro B Line の Hollywood / Highland 駅から徒歩10分
Metro Bus 2 の Cherokee 停留所から徒歩1分

［2024年訪問］

Ocean Way Recording / Cello Studio

録音されたアルバム・楽曲

Mary Jane’s Last Dance / Something In The Air / Wildflowers / The Last DJ

Ocean Way Studios Report （2001）

『Wildflowers』制作中に『Greatest Hits』用の楽曲が必要となり、気分を変えてセッションを行ったのが、この Ocean Way。ここが気に入ったようで『The Last DJ』でも使用している。

元々、2つの近接するスタジオ（6050＆6000 Sunset Blvd）を United Western Recorders が所有。1984年に売却されて Ocean Way Recording となるが、1999年に一方を手放したため2つのスタジオは今は別経営となっている。TP&HB が使用していたのは下記の青文字のところ。

6050 Sunset Blvd：United Recording（1957-61）⇒ United Western Recorders（1961-84）⇒ Ocean Way Recording（1985-2014）⇒ United Recording Studios（2015-）

6000 Sunset Blvd：［Western Studio］⇒ United Western Recorders（1961-84）⇒ Ocean Way Recording（1985-99）⇒ Cello Studios（1999-2005）⇒ EastWest Studios（2006-）

6000 Sunset Blvd, Los Angeles

Metro B Line Hollywood / Vine 駅から徒歩12分
Metro Bus 2 の Sunset & Gower St.停留所から徒歩2分

［2001年（2013年）訪問］

The Village Recorder

録音されたアルバム・楽曲

The Best Of Everything / She’s The One

建物は1922年にフリーメーソンのメソニック・テンプルとして建てられ、1968年にレコーディングスタジオに改装された。音楽録音に加えて、数多くの映画・テレビ用のサウンドトラック録音に使われている。

Mudcrutch が解散した後、Benmont は音楽活動を続けるために旧知のメンバーを集めてバンドを作り、スタジオの空き時間などで練習していた。あるときデモ録音のセッションでハーモニカを演奏してもらおうと Tom を呼ぶと、Benmont の作ったそのバンドを気に入った Tom は結局「我が物」としてしまう。それが、The Heartbreakers、場所は Villege Recorder だった。

もう一つエピソードがある。このスタジオで「The King of Comedy」のサウンドトラックを作っていた Robbie Robertson に曲の提供を求められた Tom は録音したものの使わなかった曲「The Best of Everything」を渡した。途中、Robbie は Tom をスタジオに入れなかったそうだが、出来上がった曲には Richard Manuel のコーラスと（TP&HBでは珍しい）ホーンが使われていて感銘を受けたようだ。結局、MCAが許可せず映画には使われなかったが、Robbie にプロデュースされた曲は『Southern Accents』のラストを飾ることになる。

1616 Butler Ave, Los Angeles

Big Blue Bus 1 の Santa Monica EB & Federal FS 停留所から徒歩4分

［2024年訪問］

A&M Studio

録音されたアルバム・楽曲

Christmas All Over Again

元々はチャップリンのスタジオだった場所を A&Mレコードが買い取って1966年から99年まで本社兼スタジオとする。ここで The Carpenters を始めとする数多くのレコードが生み出された。1985年1月に「We Are The World」の録音が行われたのもここ。

A&Mレコードから発売されるチャリティーアルバム『A Very Special Christmas 2』用にクリスマスソングを録音することになったときに、Phil Spector のクリスマスアルバムに憧れていた Tom はこのスタジオに大勢のミュージシャンを集め、華やかなサウンドのクリスマスソングをレコーディングした。

その後、A&M はスタジオを売却し、今は「セサミストリート」「マペットショー」等の制作会社 The Jim Henson Company となっている。