The Speaker Wars アルバムが発売に
Stan Lynchとテキサス出身でナッシュビルを中心に活躍しているミュージシャン Jon Christopher Davis が結成したバンド The Speaker Wars が5月30日にデビューアルバム『The Speaker Wars 』を発売しました。2022年にシングルを発売済ですが、それから3年経ってやっとアルバムをリリースすることができました。
アルバムに収録されたのは全10曲。その全てが Stanと Jonの共作とクレジットされています。Jonへのインタビューによれば純然たる共作は少なく、どちらかが大部分もしくは全部を書き、アレンジを2人でした曲もあるようです。いずれにせよ、1994年に Heartbreakers 脱退以降、ミュージシャンとしての活動よりソングライター、プロデューサーとして音楽に携わってきた Stan の音楽遍歴が見事に結実したような作品ばかりです。
Stanの持っていたコーラス部分のアイデアを膨らませ Bob Dylan、Johnny Cash、Graceland(Elvis Presley の邸宅およびその敷地)という名詞がちりばめられた歌詞と”Into The Great Wide Open”のギターのフレーズを模したソロが聞こえる1曲目 “You Make Every Lie Come True”から始まり、これもまた”Into The Great Wide Open”の雰囲気が醸し出されるイントロを持つ Stan 作の “Taste of Heaven”、The Wallflowers 風のJonの作品 “Never Ready to Go”、大切な人との別れを切々と歌った “The Forgiveness Tree”、フロリダ時代の Stan の実体験から書かれた”Trader’s South”、「現代の The Everly Brothers のサウンドを目指した」と Jonが語る Stan の最高のハーモニーが聞ける”Leave Him”など、是非多くの方に聞いていただきたいアルバムです。
個人的に心に残ったのは美しいメロディーの陰で聞こえる Stan のリムショット(ドラムの金属部分をスティックで叩く奏法)が “Southern Accents”を思い起こさせる “The Forgiveness Tree”とコーラスがただただ美しく切ないラストの”I Wish You Peace”です。特に後者は TP&HB 時代に TPと Mikeが The Beach Boysに影響されたような曲をレコーディングすることをあまり快く思っていなかった Stanが、長年の音楽生活を経てまさしく The Beach Boys の香りがする素敵なコーラス曲を書き上げたという事実に様々な思いが胸を去来しました。
[T]2025-6-11