L.A. Guitar Shop Report (2001)

署名を届けた後のお楽しみ??は L.A.に数あるギター・ショップまわり。中でも内2名は買う気満々で、まるで子供のような眼差しでギターを眺め、大いに誘惑と戦っておりました。そんな中、(ギターを弾けない)私も是非とも行ってみたかったのが、Norman’s Rare Guitars。TP や Mike も御用達のお店です。きっと、彼らもこの店に来ると子供のようになっちゃうのでしょうね。

原稿は 2001年2月に公開した際の内容に 若干加筆修正していますが、概ね当時のままです。時間の経過による事実関係の変化ついては何卒ご容赦ください。

Part1 : Norman’s Rare Guitars

text by   Shigeyan / 訪問日:2001年 2月 1日

Norman とは?

世界で最も有名なギターコレクターといえば、Norman Harris 氏でしょう。ヴィンテージ・ギターをこよなく愛する彼、30年以上に渡るコレクションは世界中のミュージシャン、コレクター達の憧れとなっており、日本でもその活躍ぶりはギター雑誌のみならず一般誌にまで紹介されるほどです。

彼のギターは決してコレクションのためのコレクションではありません。自分自身がミュージシャンだった経歴も関係していると思いますが、ギターを演奏する人達、創る人達、さらには音楽全般に対する情熱や愛がひしひしと感じられます。

そんな彼が、自らのコレクションを生かして「Norman’s Rare Guitars」というギター・ショップを Reseda にオープンさせたのは1975年です。以降、彼の店はあらゆるミュージシャン達の溜まり場となってきました。Tom Petty、Mike Campbell が常連であることも有名で、『Full Moon Fever』には店名が、thanks 欄にクレジットされています。

1999年には、Norman の単行本「Norman’s Rare Guitars」 (Norman Harris、David Swartz著: Swartz, Inc., Los Angeles, CA)が出版されました。

これには、Norman Harris のギターコレクションの集大成とも言うべき写真群が写っています。280のカラーページ中、一体何本ものギターが揃っているのでしょうか。どのページを開いても出るのは驚きばかりです。

写真だけでなく、 Norman の書いた文章、これがまた感動的です。ギターを探し出す執念や気迫など、興味深い逸話が巧みに表現されています。

で、この本の序文を書いているのが我らが TP です。TP はNorman との出会いを次のように記しています。

「最初に会ったのはいつだっかハッキリ覚えてないけど、確か1970年代始めハリウッド周辺で一緒に演奏してた頃だったと思う。Hammond B3 オルガンを弾いてた Norman が、最高のヴィンテージ・ギターを持ってるのはビックリしたよ。それを見に行って、とにかくぶっ飛んだよ。今でも彼のところには顔を出して何があるかチェックするんだ… もう何年にもわたって彼から大切なギターを入手してきたんだ。」

「彼のスゴいところは、最高級のギターを見つけ出して、どんどん新しい楽器を買っていくところだね。博物館級のギターを持っているなんて、この上なく最高なことじゃないか。」

いざ、Norman’s Rare Guitars へ

子供のようにはしゃぎながら店に踏み入れましたところ、残念ながら Norman の姿は見当たりませんでした。しかし、やたらと話しかけてくる恰幅の良い店員さんにキャンペーンのことを説明したところ興味を示してくれたのでした。

「あー、残念だったね。うちのオヤジが、TPとの20年来の友達なのにー。」

そう、その店員さんは Norman の息子だったのでした。縦・横両方向にビッグな体型は確かにお父さんソックリで、それゆえに年齢は不詳ですが、そんなに年がいってないことは確かです。まだまだ修行中のようで、ギターの値段を聞いても、その都度他のスタッフにヘルプを求めていましたから。

「オヤジならば、TP の写真も持ってると思うけど… TP と関係あるギターもあるかもしれないけど、ちょっと出張でいないんだよね。ごめんなさい。」
「この店は昨年の5月に移転したばかりなんだ。TP は時々やってくるんだけど、そういえば移転してからは来てないよ。あまり人前に姿を出さない人だから…。」
「最後に来たのは、8ヶ月前だったよ。確か、娘さんのギターを買ってったよ。」

TP 以外にも、Jakob Dylan が前の日に来ていたり、X(日本のあのXではありません、念のため)のベーシスト John Doe のベースがリペアされていたり、あらゆるアーティスト達との密接な関係が窺い知れるフレンドリーなお店でした。L.A. にお立ち寄りの際には是非!

(付記)
後日、Guitars R Us へ行ったところ、店員さん2人が手持ち無沙汰に雑談してました。
「いや~、Norman にはかなわないよね~。あいつ、働き過ぎだよ。働いた分、ギターが回転するから、値段も破格だし、それでまたお客が集まるだろ。誰にもマネ出来ないよー。」

Part2 : ギター屋さんでうろうろ

text by   Jiro / 訪問日:2001年 2月 1・2日

店の情報等は全て2001年時点のものです。現在の状況と違う部分もあると思いますので、ご留意のほどお願いいたします。

ギター屋さんのお話です。よーく考えなくとも Gibson USA やら Fender USA やら、当たり前にいっぱいあるのです。L.A. には無い物がないって言うらしいし、お国じゃなかなか見られないギターがある事でしょう。空気も乾いているから、Body は良く響くだろうから、鳴りも違う事でしょう。関税もかからず安い事でしょう。
L.A. でレンタカーの運転させてもらう為、入ったばかりのクレジットカードがあります。生まれて初めてカードを使うにはやはり思い出となる品を … 周りの3人も思い出作りに協力するとか言ってきたぞ … 逃げるか …

☆ Norman’s Rare Guitars

「西の大御所」とか、「L.A.でもっとも信頼のある」と言われている有名なビンテージギター専門店。入り口ガラスにデフォルメ TP、似てない Dylan、存在感のないSpringsteen?、右利きのジミヘン??が描かれており、軽く悩みつつ店に入れば、「なんだ、なんだ、なんだ!」の逸品だらけ。

御用達にしている方々の写真(*1)が壁やギターにささってまして、それじゃぁきっと高いんじゃぁ、と値札をめくればあらお得(比較計算はご勘弁を)。店内では若者とご老人による突発的ギター+マンドリンセッションが始まり、なんとも和やかな雰囲気。小さい頃から近所にこんなお店があれば通うのになぁ。

Norman Jr.(店主 Norman 氏の子息とのことで勝手に命名)と他お三方が写真を前に歓談しておりまして、Traveling Wilburys の箱・ポスター・印刷サイン付のTWギター(*2)で Toshi さんが唸り、「昨日は Jakob Dylan 来てたよ」に Mayu さん嬉し悔しの臍を噛んでて、Jakob の壊したギター(*3)と記念写真。何時までも留まっている訳にはいかず、後ろ髪惹かれつつも「また来ます」の謎の一言を残して後にしたのでした(*4)。 

*1) TP、Bob Dylan 、George Harrison 、David Crosby 、J.J. Cale 、Graham Nash 、Edward Van Halen …(誰を pick up すれば良いのか悩んでしまう!)
*2) Traveling Wilburys 活動時、限定モデルとして発売されたエレクトリック・ギターです。Gretschが日本のギター会社グレコに委託生産させたもので、ギター自体の完成度は決して高いとは言えませんが、ボディー裏のメンバー達の署名ペイントには誰もが反応することでしょう。
*3) ”Sleepwalker”のプロモーション・ビデオに使用され、その中で Jakob 自ら破壊したもの。後日、Hard Rock Cafe に飾られるとの事。もしかして Mayu さんが最初に手にしたファンかも。
*4) 一日悩み続けた挙句の翌日、初めてのカードでのお買い物をさせて頂きました。
1966 Gibson EB-0 Bass (SG bass)- cherry red、扱いやすく音もよくお買い得でした。

☆ Norman’s Rare Guitars
18969 Ventura Blvd., Tarzana, CA 91356

☆ Guitar Center

ここは楽器の百貨店、いや博物館かな。
入り口手前の床には、Rock Walk というチャイニーズシアターの音楽家版といったミュージシャン(*1)の手形やブロンズ像があり、入って左が打楽器館、正面がギター館という作り。ギター館は4つ程のコーナーに別けられていて、まず足を踏み入れれば、流行ものとお手ごろ価格のギターやアンプ群で、その奥の部屋はビンテージコレクションが所狭しと飾られている。

右手に Martin、Gibson のビンテージアコギ、売らないギターまでも飾ってあり瞬間犯罪者の目つき。左手に最近のアコギ群、さらに奥へ行くと Fender(ブロードキャスターも)、Gibson などの博物館モノが手の届かない高さまで飾られており、その高さにしろ値段にしろ口をあけて見るあげるしかない。さらに狭い階段を上り、狭い通路にファイアーバードや ES335。一歩下がって全体像をゆっくり堪能… は、残念ながら落ちますので:)
ここに行くときはしっかりと時間を確保しておくべきでしょう。その数量もさる事ながら種別も多く、あっという間に時間が経過してしまいます。

*1) Rock Walk ベース&スティック奏者で有名な Tony Levin (King Crimson 等で活動)の手形がありまして、やはり彼の指は、宇宙人並に長かったです:)

☆ Guitar Center
7425 Sunset Blvd. Hollywood, CA 90046

☆ Freedom Guitars

見かけは鉄格子が良く似合う質屋さん風な構えです。以下に掲載の2店も含め、Guitar Center の直ぐ側に点在しております。ギター購入の触手を伸ばすしげやん以外はCDを漁りに行っておりまして:)エピフォン、ダンエレクトロなど安物&リイッシューもの中心との事。ヴィンテージは殆どなしだそうです。

☆ Freedom Guitars
7501 Sunset Blvd, Hollywood, CA 90046

☆ Voltage Guitars

入った瞬間から「ムッやるな!お主」と感じ入るシンプルなエレキの配置から、「良いもので好きなものしか置かんもんね!」との強気な空気がヒシヒシと感じられます。

ギターを眺め歩きますと全てのギターに値札が無く、ちょっと聞くのに勇気がいりそう。また聞こうにも、大型犬2匹と仔ヤギ1匹の店員さん(?)がおられまして、「不審者は断固として許さんもんね!」「上客は引き止めちゃるもんね!」と本能に準じた行動が即座に取れる様、首縄もなく、放し飼い状態です。

隣の倉庫っぽい部屋では、壁面アコギで綺麗に埋め尽くされており、その中で青年が高椅子に腰掛け、黙々とアコギを奏でており、なんとも高貴でおしゃれな空間がここにはありました。

ビンテージギターの数々垂涎を含み、圧倒されつつ店を出ようとする所、しげやんは店員さんに心の動揺(*1)をキャッチされてしまい、前足(失礼)で引き止められておりました。あ・あと、Mayuさんが俊敏な仔ヤギ店員さんに靴紐をハグハグと噛まれ玩ばれておりました。お・おいしいのか?

*1) 後日、しげやん談「ヨダレの出るようなテレキャス・コレクションがありました。サイト情報で調べたところ$10,000するではないか(嗚呼)。」 

☆ Voltage Guitars
1513 Gardner St. Hollywood, CA 90046

☆ Guitars R’ Us

Sunset Blvd.を渡ってすぐにオールハンドメイドで有名なお店 Guitars R’ Us があります。国内ではチャーを初めとするお歴々もご愛用との事。ビンテージと、ハンドメイドものが混在し多数設置されており、ハンドメイドには全て製作者のカードが挿まれていて、その自信の程が伺えました。

しげやんが試し弾いたのは、Taylor アコギ12弦と、Fender ノーキャスター・レリック(いずれも$1600前後)の2本。当旅行中、唯一聞けた12弦は素晴らしく、背を向け中腰で弾くしげやんの悩みが体を通り越え、店内心地よい音色が響いたのでした。また、この2本に関しては、多少観光地らしく値が加わっている様だったとの事。富士山での自販機みたいなものですかね。

☆ Guitars R’ Us
7406 Sunset Blvd, Hollywood, CA 90046

目の保養か、葛藤し悶絶するかは、財布の紐と本人の気持ち次第ですが、是非観光がてらにでも訪れてみる事をお勧めします。また、購入意欲が少しでもある方(ありそうな方)は事前に欲しい逸品を洗い出し、HP等で値段検証をしておく事もお勧めいたします。