Jul-2024(TP&HB)

Tom Petty Estate 大規模な契約を締結

Warner Music Group の Warner Chappell Music (WCM) は Tom Petty の遺産管理団体<Tom Petty Estate>と世界規模の契約を締結したことを自社のサイトで発表。これにより TP の著作権の管理は Wixen Music Publishing から WCMへと移りました。

今回の契約内容はアメリカ国内の楽曲使用のみならず世界規模でのものなので、自国以外での映画やドラマで TPの曲が使われる可能性もでてきました。ファンコミュニティーでは TPが嫌っていたコマーシャルへの楽曲提供も有り得るのではと危惧する声も上がっています。今回の締結には大まかに言うと1~2枚目のアルバムの曲(およびその頃に書かれ著作権登録された作品)は含まれてはいません。WCMは契約締結の発表と同時に自社の Instagram に TPの作品を迎え入れることを歓迎する旨の投稿をしています。

Martyn Atkins、Warnerを訴える

1980年代後半から2000年代前半にTPとコラボレートし、数々の写真や動画を残した Martyn Atkins が、自身の撮影した映像を無断で使われた上に支払いさえもなかったとして Warner Music Group Productions(WMG)を訴えました。

問題となったのは WMG が製作したドキュメンタリー作品「Tom Petty:Somewhere You Feel Free – The Making of Wildflowers」(2021年公開)。この件は Billboard.com によって一報が報じられ、追いかける形で RollingStone 誌も記事を掲載しましたが、(登録が必要となり)簡単に読むことができないので、信頼できる American Songwriter 誌とランキング記事でお馴染みの Ultimate Classic Rock サイトのリンクを載せておきます。

記事によると、Atkins は Tom Petty Estateのマネージャーおよび Adria Petty(TP長女)に呼び出され、『Wildflowers』制作時の新しいドキュメンタリーを作るための会合を持った際に、プロデューサー・監督として携わって欲しい旨を告げられ、喜んだ同氏は作品のアイデアを出し、未発表の映像に関しての情報も提供。しかし、その後、一切の連絡がなく、翌年に作品は完成。「45分以上の未発表映像使用」との宣伝も評判になり、映画祭での上映を経て一般公開された。その後3年近くの間、一度のコンタクトも、使用料の支払いもない状態なので、今回の訴訟に踏み切ったとのこと。

6月18日に Atkins が裁判所に提出した訴状を読みましたが、『Wildflowers』制作時の撮影に関わる費用は全て同氏の支払いだったことが書かれていました。つまり TP側もレーベルの Warner Brothers も一切金銭面の負担はなかったということです。Atkins はアルバムのレコーディングに密着して撮影を続け、その成果が1995年に VH-1で放送されたドキュメンタリー2作品「Dog with Wings」(22分)、「God Bless Our Mobile Home」(45分)とツアーを追いかけた「400 Days」(58分)、さらに”You Wreck Me”のミュージックビデオに結実しました。

「Tom Petty:Somewhere You Feel Free ~」の監督を務めた Mary Wharton は「God Bless Our Mobile Home」に Associate Producer(製作補)として参加していました。Atkins の訴えが正しいのであれば、映像に関する費用は彼が払い、使われていない映像があることを知っていた(認識していた)可能性もあります。どうにもスッキリしない話です。Tom Petty Estate については個人的には疑問が多いですが、<無許可&未払い>というのは信じがたい話です。それが本当の本当ならば、TP の遺産管理団体としての存在価値はゼロだと思います。現時点では、原告側からの提訴が始まったばかりなので、被告(WMG)の反論を待ちたいと思います。

『Petty Country』発売

『Petty Country』が6月21日に発売されました。みなさんのお手元には無事に届いたでしょうか。アナログ盤がまだなので CDしか確認できていませんが、ブックレットの解説を書いたのはカントリー系を専門とする評論活動を長年行っている Holly Greason。文章量としては多くありませんでが、カントリーへの愛情、この作品への深い理解、TP へ言及した内容など魅力にあふれていて一読の価値がある文章です。歌詞の記載はなく、曲ごとの詳細なクレジットのみ付いています。

今作はプロモーション活動が効を奏したのもあり、発売初週で Billboard の<Compilation Albums>チャートで1位を獲得しました。

6月22日放送のナッシュビルの人気テレビ番組<Opry Live>では Dierks Bentley、Steve Earle、Lady A が自身の持ち歌とアルバムでカヴァーしたTP作品を演奏し、大喝采を浴びていました。演奏の合間には司会者でカントリーミュージシャンの Natalie Stovall がアルバムの解説をしてくれています。YouTube に映像がありますので是非ご覧ください。