Interview 誌 1992年6月号に掲載された TP×Ringo の超レアな対談。ロサンゼルスの Hotel Bel Air で TP が Ringo にインタビューしたものです。二人の掛け合いが面白いので、その様子を思い浮かべながら読んでみてください。
2007年-2008年にメールマガジン【Depot Street】に掲載した原稿に、未掲載だった部分も新たに加えて全文をお届けします。
Ringo Starr talks with Tom Petty
1992年の元記事を2015年11月11日に<New Again: Ringo Starr>として再掲載したもの
RS: こんばんは。私は Ringo Starr と申します。
TP: 私は Tom Petty です。年季が入った2人の専門家がテープレコーダーを囲んでいます。Ringo、新しいアルバムを作ったんだって?
RS: そうだよ。アルバムに入らなかった曲に君が参加してくれて感謝するよ。
TP: あーあ、僕はいつも外されてしまう曲に参加してるんだよ。
RS: まあまあ、お前だってビデオで俺にドラマーの真似をさせたじゃないか。これでおあいこだね。
TP: アルバムはまだ聴けてないんだけど、とてもとても良いって聞いてるよ。
RS: そっか、じゃあ一枚あげようね。はいどうぞ。
TP: ありがとう。で、アルバムでドラムは叩いてるの?
RS: 叩いてるよ。ドラマーは俺だけだ。この地球上で最高のロック・ドラマーといえば俺だからな。同意してくれるよな?
TP: その通りだよ。異議はないね。
RS: 1988年に(アルコール依存症の)リハビリ施設に入ってから身辺整理をしてきたんだ。俺はこの業界に戻ってきたんだよ。実際に演奏してパフォーマンスして、最初の All-Starrs を組むまでに十分シラフになったんだ。そして、90年にはツアーのライヴ・アルバムを出した。だから、91年にスタジオでアルバムをつくることは自然だったのさ。
TP: 素晴らしいね。またツアーに出るの?
RS: 今年はまた新しい All-Starrs を作ったんだ。前回から参加の Joe Walsh、Nils Lofgren に加えて、Burton Cummings、Dave Edmunds、Todd Rundgren、Timothy B. Schmit、Zak Starkey、そして Ringo Starr だ。
TP: わお。それはすごいバンドだね。
RS: オーケストラだよ。
TP: 前回のバンドのときに見に行ったね。本当に良かったよ。
RS: どこだったっけ?(ロサンゼルスの)Greek Theatre だっけ?
TP: そうだよ。
RS: あそこは良いよな。俺にとってはちょうど良い大きさの会場だ。お前がやるようなデカいスタジアムでなんか演りたくないね(笑)。
TP: えー、それはあなたがもうお金持ちだからだよ。
・Ringo Starr – dr, vo
・Joe Walsh – g, vo
・Timothy B. Schmit – b, vo
・Dave Edmunds – g, vo
・Todd Rundgren – g, vo
・Nils Lofgren – g, vo
・Burton Cummings – key, vo
・Tim Cappello – sax
・Zak Starkey – dr
RS:最近、新しいレコード契約 (*1) を結んだって聞いたよ。お前、懐が潤ったんだろ?
TP: いや、インタビューをやって(稼いで)るくらいだよ。
RS: 俺だってそうだ。俺たちの生活って所詮そんなもんだよな。でもな、(George) Harrison さん… 生涯億万長者のあいつは(仕事もせずに)街を離れたらしいぜ。
TP: あー、1年に1回コンサートの男だろ。
RS: 違うぜ、7年に1回だよ。
TP: 最近、ロンドンの Royal Albert Hall で George と一緒にステージに立ったんだよね。(*2)
RS: あれは素晴らしいショウだったぜ。だって、Joe Walsh がオープニングだったんだけど、Zak (*3) が Joe と演奏したからな。それはかなりのスリルだったよ。俺は子供たち、前妻、友達と一緒に観に行ったんだ。ただ観るだけの予定だったんだよ。ショウはすごく良くて… George は最高にノリまくってたぜ。そのままツアーに出るべきだったよ。あいつにもそう言ったんだ。神が彼にさせたがっていること、つまりみんなの前で演奏すること、をするべきだってね。それから、舞台裏で Joe が寄ってきて言ったんだ、[Joeの口調を真似しながら]「George が、あなたがステージに上がりたいんじゃないかな、と言ってるよ」とね。特に説得されるわけでもなく、最後の2曲でステージに上がったのさ。
TP: いやー、そのときは Mike Campbell が参加してたんだけど、あなたはもう最高のドラマーだから、あなたが出てきたら、そのまま座ってリズムを感じて楽しんでただけだと言ってたよ。この際、あなたのことを「人間メトロノーム」と呼ばせて欲しいな。
RS: B.B. King は俺のことを「人間古時計」って言ってくれたぜ。
TP: (笑)じゃあ、Timothy Leary(*4)は何て呼んでくれたの?
RS: うわぁーーー!
TP: 昨晩、George にブルースを弾いてもらったんだ。僕たちはひたすらジャムったよ。彼は素晴らしいブルース・ギタリストだね。知り合ってからずっと、彼は一度もそれを見せたことはなかったんだよ。
RS: 彼がブルースを演奏したのは何よりだな。あいつが愛してやまないウクレレじゃなくって。
TP: まあ、そういう時期も数年あったけどね。ウチには、もしものときのために、ウクレレが4本もあったんだよ。
RS: George に禁断症状が出たときに備えてだろ?
1)Warner Brothers への移籍についての言及
2)1992年4月6日、ロンドンの Royal Albert Hall で行われたベネフィット・コンサート
3)Zak Starkey
Ringo の息子であり、The Who、Oasis で活躍中のドラマー
4)(1920-1996) LSDの重要性を唱えた心理学者、ヒッピー・ムーブメントの先駆者的存在として The Beatles にも多大な影響を与えた
TP:家ではどんなレコードを聴いているの? 昔好きだったものも聴いたりするのかな?Johnnie Ray が好きだったよね。
RS:ああ。Johnnie Ray や Frankie Laine はあまり聴いてないな。 Nat King Cole かな。
TP:僕は Nat King Cole とアルバムを作るだろうな。そういう運命なんだ。(笑)
RS:そりゃあ、センセーションになるな。絶対ね。彼らはお前をビデオに撮るよ。
TP:僕が見えるかい?[歌いながら]「Mona Lisa, Mona Lisa…」(*5)
RS:それじゃあ、レコードが沢山あるとして、お前なら何をかける?Ray Charles は絶対にガッカリさせないね。あとは、なんでか分からないけど、『Sgt. Pepper』を聴いている。いや、理由は分かってるよ。George Martin が『Sgt. Pepper』のメイキング番組をやって俺たちにインタビューしたんだ。それで、レコードをかけてどんなだったか聴いてみようと思ったわけだ。俺はマジで再びノックアウトされたぜ。随分長いこと聞いてなかったから、曲の多様性に吹っ飛ばされたよ。でも、同時にすごくナイーブ(純朴)にも聞こえたんだ。
TP:ナイーブ?
RS:ああ。プロダクションとかあの当時の芸術の状況とか。
TP:うん、最高のプロダクションだったね。素晴らしいサウンドだ。
RS:でも、ミックスが… あちらこちらに音がちらばっているな。
TP:でも、それが好きなんだ。
RS:嫌いということではないんだ、Tom。[Petty 笑う]サウンドがナイーブなんだ。
TP:分かったよ。映画はどう?演技はもうやめたの?
RS:やめたわけじゃないよ。ただ、またドラマーとしてやっていくことに集中しているんだ。夢よもう一度、ってね、13歳のときの夢だ。
5)一連の会話は、1991年に発売された Nat King Cole と Natalie Cole のバーチャル・デュエットによる「Unforgettable」が大きな話題となったことを受けてのものと思われる
TP:今はロサンゼルスに住んでいるの?
RS:ああ、俺たちはモンテカルロの住民なんだけど、ビバリーヒルズにも家を買ったんだ。それで、ここに住んでいるのさ、また仕事を始めたからね。あとはアスペン (*6) に家があるよ、みんなと同じようにね。お前も持ってるだろう。
TP:いいや。
RS:お前はどこだ?テルライド (*6) か?(笑)
TP:いいや、スキーはできないよ。やり方もわかんないよ。
RS:俺と一緒に来ればできるさ。面白いよ。
TP:足とか折ったことはないの?
RS:今まで身体の骨も、どこの骨も折ったことはないよ。
6)Aspen, Telluride
米国コロラド州の町、高級スキーリゾートとして人気
TP:(笑)じゃあ、Ringo、時間があるときは何をしているの?
RS:ああ、俺は大抵お前の家に行ってお前が寝てるのを見てるのさ。
TP:(笑)それ以外でさ、他に興味のあることは?
RS:今は、箱開けだな。俺たちは新しい家に引っ越してきたばかりでね。家の外に座っているのが大好きなんだ。俺の頭の中でいろいろ物事が変わってきてね、陽の当たるところに出たいんだ。それもあって、この家を買ったのさ。10億ドルの温室だな。沢山の窓と大きなガラス。平屋だよ。俺は歩き回りながら電話で話したり、TVを見たり、レコードをかける。Barbara (*7) は学校で心理学を勉強していて、俺はここで楽しんでいるんだ。
TP:へえ、彼女は大学に戻ったんだ。良いことだね。
RS:彼女が博士号を取得していると言ったと思うけど、それは間違ってたよ。いずれそうなるよ。
TP:僕は高校に行き直すことを考えてるよ。
RS:綴り方を習うんだな。
TP:あとは、足し算だ。子供の宿題も手伝えないからね。恥ずかしいよ。
RS:うちの子は1人を除いてみんな学校をやめてしまったので、俺は宿題を手伝うこともできなかったよ。でも、もし長い休みがあったら、UCLA のカリキュラムを調べて、陶芸のクラスでも受講しようかと、真剣に考えているんだぜ。
TP:ベイトキャスティング (*8)?
RS:チューイングガム作り。
TP:本気なの?
RS:俺はマジで本気だぜ。人がやれることは100万個もあるんだ。ぶらぶら歩きまわって、何が起こってるかを見るのは素晴らしいよ。それが未来のことにつながるんだ。とにかく、Tom、朝食もきたし、一旦休憩しよう。
TP:そうだね。そろそろ終了だね。
7)Barbara Bach
元モデル・女優、Ringo 夫人
8)bait-casting
ルアー釣りの方法
【Depot Street: vol.107, 109, 116】2007年11月11日, 2008年1月11日, 8月11日 翻訳:Shigeyan / Mayu