Sound City Special from "The Waiting" archives
1999年1月11日から2000年12月31日にかけて、「TP&HB日本公演実現」キャンペーンを行っていた私たち<HBJP>のスタッフ(Shigeyan、Jiro、TOSHI、Mayu)は、2001年1月31日、集まった署名を手にロサンゼルスに向かいました。

キャンペーン当初から「集めたファンの声を直接バンドに届ける」という漠然とした目標がありました。署名集めという意味では決して成功とは言い難かったですし、バンドやマネジメントの方々に会える訳でもなかったのですが、長かった「署名集めキャンペーン」を終了するにあたり、私たちは目標の完了にこだわりました。

無事に署名を届けた後は、「TP&HBゆかりの場所」訪問を自分たちへのご褒美とさせてもらいました。スタッフ Shigeyan の周到な準備のお陰で、私たちはTP&HBゆかりのスタジオ(Sound City Studios、Cello Studios)を見学させて頂くというこの上ない幸運に恵まれました。今思い出しても、それは本当に素敵な体験でした。

時は流れてあれから10年以上 … その「Sound City Studios」が閉鎖されたニュースには少なからず寂しい思いでしたが、伝説のスタジオは映画となって甦り、多くの方々にご覧になって頂くことができるようになりました。ということで、映画の完成をお祝いしつつ、私たちの「Sound City Studios」訪問記を再度公開して、ちょっとだけ自慢をさせて頂こうと思った次第です。
原稿は 2001年2月に公開した際の内容に 若干加筆修正していますが、概ね当時のままです。時間の経過による事実関係の変化ついては何卒ご容赦下さい。また、写真は今回の映画からのものも含め追加掲載しています。
Studio Report-1 : Sound City Studios 訪問日 : 2001年 2月 1日
敬愛するアーティストの創造の場であるスタジオはファンにとっては何とも神聖なムードを感じる憧れの場所です。TP&HBが使用したスタジオとしてまず思い浮かぶのは「Sound City Studios」ではないでしょうか。そんなことから今回の訪問先として真っ先に名前が挙がったのがここでした。メールおよび電話による交渉(というかお願い)の結果、大変嬉しいことにスタジオを見学させて頂くことができました。
text by Shigeyan  .

Sound City Studios という名前が頭の中に焼きついたのはいつ頃からでしょうか。『Playback』のブックレットに、同スタジオのロゴが刻印された機材写真が載っていたのが印象的でした。

TP&HBも勿論ですが、それ以外にも Fleetwood Mac (*1) 『Rumours』という化け物アルバムをはじめ、Nirvana (*2) 『Nevermind 』、Rage Against The Machine (*3) 『Rage Against The Machine』、The Black Crowes (*4) 『Amorica』、Red Hot Chili Peppers (*5) 『One Hot Minute 』など、90年代アメリカン・ロックの名盤数々を産んだスタジオとして長年憧れの地となっていました。

そんなスゴいスタジオのことです。一体どんな一等地にあるのか…と身構え、L.A.北部郊外の Van Nuys へ車を飛ばしました。しかし、目に入ってきたのはデニーズ、住宅地、工場…という、とてもロックとは言えないロケーション。しかし、そういう環境の中、確かに「Sound City Studios」はありました。

「Sound City Center」と書かれたデカい建物の敷地内に入ったはよいものの、スタジオの入り口が分からず、ついでに緊張もしまくってオドオドしているところ、Jiro さんが大声を出しました。そう、怖いもの知らずの彼はビル敷地へどんどん入っていき、今回の案内役 Shivaun 女史と挨拶を交わしていたのでした。

そんな Shivaun は、緊張と興奮でガチガチになっている私達に優しい言葉をかけてくれました。まるで我が家へ招待してくれるかのように、「Come on in ! 」と笑顔でスタジオの中へ案内してくれました。

 

(*1) Fleetwood Mac
『Rumours』は厳密にはサウサリートの「Record Plant」でレコーディングされ、Sound City ではミキシングが行われました。

(*2) Nirvana
『Nevermind』(1991年)を録音するのに Sound City で要したのはわずか16日間、殆どが2〜3回のテイクのみだったそう。Dave Grohl のドラムは残響音を生かすため 「Studio A」のど真ん中にセットされたそうです。

(*3) Rage Against The Machine
Nirvana とともに1990年代を代表するロックバンド。ヒップホップに強く影響を受けた Zack De La Rocha のラップと Tom Morello の変態ギター、政治的思想を強くアピールした革新的な姿勢が常に話題を呼んでいました。
 
(*4) The Black Crowes
Robison兄弟率いるジョージア州出身のバンド。George Drakoulias プロデュースのデビュー作『Shake Your Money Maker』(1991年)以降傑作を発表し続けました。

(*5) Red Hot Chili Peppers
L.A.出身の4人組。破天荒な行動、メンバーのドラッグ問題による死亡や脱退を乗り越え、Rick Rubin の名プロデュースもあいまって現在は名実ともにトップに上り詰めています。

青空とのコントラストが印象的な白塗りの建物に入って、まず感じられたのは独特の、言葉にし難い「お香」の匂いでした。「いかにも西海岸」というカラッとした空気が一気に神秘的なモノへと変化し、別の世界へと入ったことを実感しました。

そして、目に入ってきたのは壁に飾られたゴールド&プラチナディスク。TP&HBの『Damn The Torpedoes』『Hard Promises』『Greatest Hits』、さらには『Wildflowers 』も確かにありました(良かった良かった!)。しかし、それに留まることはなく、あららあらら… あらゆるお宝物が並んでいました。

この写真のみ素材が見つからず旧データのためサイズが小さい
飾られていたゴールド&プラチナディスク (TP&HB以外)
Fleetwood Mac 『Rumuors』 『Fleetwood Mac』
Barry Manilow  1枚
Rick Springfield 『Working Class Dog』『Living In Oz』 他1枚
Pat Benatar   2枚
Dio  『Holy Diver』
Ratt  『Out Of The Cellar』
Rage Against The Machine 『Rage Against The Machine』
Nirvana 『Nevermind』
Cheap Trick 『Heaven Tonight』
REO Speedwagon 『Good Trouble』
Foreigner  1枚
Eve 6  『Eve 6』
Tonic  『Lemon Parade』
Red Hot Chili Peppers 『One Hot Minute』
最初に案内してもらったのは Studio A。 TP&HB がレコーディングし、あらゆるジャケ写真に用いられている部屋です。広さにすると20畳くらいでしょうか。あの音が!まさにこの部屋で創り出されたのです!


見学時は、知る人ぞ知る覆面メタル・バンド Slipknot (*6) がレコーディング中で、Ibanez やJackson のギターやマーシャル・アンプなどの歪み満載機材がセッティングされていました。さらに、コンソール・ルームにはドクロの旗が貼られたり、怪しげなオブジェが置かれていて、オドロオドロしいサウンドが視覚的情報だけでもイメージ出来るくらいです。

「Slipknot って、レコーディング中もお面かぶってるんですか?」と三流インタビュアーのような愚問を Shivaun にしたところ …

「さすがに演奏するときはお面かぶってませんよ(笑)。だから彼らが来る前にスタジオを見てもらわないと!」
「でも、本当に良い人たちなんですよ。Rage Against The Machine もそうですけど、ハードな音楽をやる人たちは皆ものすごく優しい人たちばかりなんです。」

なお、コンソール・ルームには Johnny Cash (*7) と Rick Rubin (*8) のツーショット写真が飾ってあったり、ミキシングボードには Carl Perkins (*9) のサインがありました。Shivaun 曰く 「ミキサーに落書きする人ってそうやたらいないんですけど、でも、あの Carl Perkins ですよ!誰も止めませんよ!」 そりゃそうですわ。
(*6) Slipknot
アイオワ州出身のメタル・バンド。メンバー全員が覆面をかぶり 数字のみで名前を表記するという彼らの真実はベールに包まれているが、コアな人気は根強く、本年のグラミー賞(best heavy metal group部門)にもノミネートされています。

(*7) Johnny Cash
大御所カントリー・シンガー。『Unchained』(1996年)ではTP&HBと共演、「Southern Accents」のカバーも収録。難病パーキンソン病を克服した復帰作『American III: Solitary Man』(2000年)では「I Won't Back Down」に挑戦しています。

(*8) Rick Rubin
『Wildflowers』以降のTP&HBには欠かせないプロデューサー。ニューヨーク大学時代からの友人 George Drakoulias (後述)とともに「Def American」レーベルを設立し、Run DMC、The Beastie Boys などのヒップホップ台頭の原動力となりました。

(*9) Carl Perkins (1932-1998)
1950年代からロカビリー歌手として活躍。自身のキャリアよりも Elvis Presley 「Blue Suede Shoes」の作者として有名かもしれません。The Beatlesは彼に深い敬意を払い「Matchbox」など多数のカバー。晩年作『Go Cat Go』にはTP&HBも参加しました。

Shivaun はさらに詳しく案内をしてくれ、他のアーティスト達についても語り始めました。

「Rage Against The Machineのデビュー作はここで録音されたんですよ。もちろん当時は無名だったんですけど、その音を聴いたらもうビックリして… これはスゴい!と思ったら、あっという間にトップ・アーティストになりましたよ。」

「A Perfect Circle (*10)? あ、ここで録音しましたよ。Tool (*10) もよくここを使いますから。A Perfect Circle の Josh Freese (ドラマー) 知ってます?彼は本当に最高の人ですよ。セッションでも大活躍ですし。」

「The Wallflowers (*11)? 残念ながらレコーディングはないですけど、Jakob が遊びに来たことありますよ。」

「そういえば日本人でここを使った人がいましたよ。ちょっと名前は言われないと思い出せないんですけど… ほら、ビッグで Rod Stewart みたいなシンガーですよ。誰でしたっけ。(*12)


(*10) A Perfect Circle、Tool
Tool はダークで重々しく神秘的な世界を醸し出すヘヴィ・メタル・バンド。『Undertow』(1993年)以降、絶大な評価を受けフェスのトリを飾る人気を誇っています。
A Perfect Circle は Tool の中心人物 Maynard Keenan が進める別プロジェクト。2002年にデビュー作『Mer de Noms』を発表しています。

(*11) The Wallflowers
Jakob Dylan を中心メンバーとして1992年デビュー。『Bringing Down the Horse』(1996年)で大ブレイク。そのルックスにあちらこちらの女性が殺られているらしいです。

(*12) Sound Cityで録音した日本人
矢沢永吉のことでした。

そして、我らの本命… TP&HBについても内輪的エピソードを教えてくれました。

「このロウソク立ては Tom からプレゼントされたんですよ。」
(Studio A 内)

「Tom くらいのレベルになるとレコーディングの期限を気にすることなく録音出来ますから、彼らの予定は数週間レコーディングした後に休んで、スタジオが次に空いたときに予約して… という感じです。」

「Tom はレコーディング以外でここに出入りすることはないですね。とても private な人です。業界的な雰囲気は全然ないですよ。」


『She's The One』のジャケット(中面)
蝋燭立てとボーカル・ブースが写っています。




スタジオで飼っているネコが、スタジオ内でニャーニャー鳴きながら鎮座していたのですが、このネコと TP&HB との出会いについても教えてくれました。

「そういえば、『Wildflowers』のときにもこの子がスタジオに入っちゃって。Tom は途中まで気がつかなかったんですよ。Steve Ferrone が「ほら、こうやって部屋からネコを出すんだよ」とネコをあやしてスタジオから出そうとしたり。」

こういうエピソードにドキドキしている我々一同の気持ちを察知したのか、Shivaun は冷蔵庫まで案内して飲み物を勧めてくれました。ああ、何て良い人なんでしょう。同じようにして TP&HB も水を飲んだのでしょうか…。

Sound City で録音された TP&HB作品

* Damn The Torpedoes
* Hard Promises
* Let Me Up
* Wildflowers
* She's The One

(これ以外にもシングルB面曲など多数がレコーディングされている)

Studio B では Unida という新人バンドが George Drakoulias (*13) プロデュースでレコーディング中でした。Studio A より一回り小さいスタジオ内には中近東風のエキゾチックなランプを始めとした淫靡なデコレーションが施されていました。

ヨダレが出そうなヴィンテージ・ギターが山のようにセッティングされている他、録音時の音のカブリ (*14) を防ぐためでしょう、年季の入ったFender オールド・アンプ(見るからに良い音が出そうだ!)が廊下にセッティングされていました。

で、そこらの機材に「DRAKOULIAS」と名前の入ったガムテープが、ベタベタ貼られているのですもの、たまりません!刺激が強過ぎると思い他方向を向いたら、「Rubin」と書かれた機材が置かれてました。嗚呼ドキドキ。そんな私達に Shivaun が解説してくれました。

「George はいろいろな機材を持ってますよ。あらゆるモノを。」 「George は organized だけど、Rick は unorganized でねー。」

TP&HBのアルバムジャケットのスタジオ写真について話題が及ぶと、「いやー、Tom はこのスタジオの写真、私以上に持ってるので…」と言いながらも、Shivaun 所有の秘蔵写真を出してくれました。

残念ながら TP&HB の写真はありませんでしたが、Rage Against The Machine のメンバーが、スタッフの頭を断髪する際少年のようにはしゃいでいる光景、The Foo Fighters (*15) の Dave Grohl が駐車場でバーベキューをしたり、オモチャの乗り物をブンブン乗り回す写真など、アーティスト達の瞳が輝き童心に返ったところを写している素晴らしい写真ばかりでした。そういえば、演奏時のシーンは一枚もありませんでした。


(*13) George Drakoulias
プロデューサー。The Cult『Electric』、The Black Crowes 初期2作のプロデュースが特に有名。『Playback』に収録された未発表曲のミキシングをきっかけにTP&HBに関わるようになり、『Echo』では production assistance への感謝が記されています。

(*14) 音のカブリ
複数の楽器が一度に録音される場合、例えば、ドラムの音を拾うマイクに他楽器の音が入るのを防ぐため、敷居を立てたり別部屋(ブース)にて録音されることがよく行われます。

(*15) The Foo Fighters
Nirvana のドラマー Dave Grohl が Kurt Cobain自殺による解散後、1994年に結成したバンド。このバンドを結成するにあたってTP&HBからの誘いを断ったというエピソードも。最新作『There Is Nothing Left To Lose』(2000年)発表後、昨夏のフジ・ロック・フェスティヴァルにも出演しました。

レコーディングの休憩時間中、TP&HB は何をしているのか聞いてみたところ、「みんなここで休んでいますよ。」と、ソファーが置いてあるTVルームに案内されました。

「ここでTV見たり、ゲームやったり… Sony プレイステーションとか。」 という発言には一同大爆笑。そういえば、ブロック崩しなどの古いゲーム機やスケボー、ラジコンなどもありました。


 「Sound City - Real To Reel」から
 休憩中(?)に卓球をするTP
 (卓球するんですね!)

一体、どのくらいスタジオにいたのでしょうか。見学開始の午前11時30分から1時間強はいたように記憶してますが、ちょっとうろ覚えです。まるで時が止まってしまったかのような、未だかつて経験していない異次元空間にトリップしていたことは確かです。

そんな中、最も印象的に感じたのは Shivaun の優しさ…良い音楽を創れるためのムード造り、そして音楽に対する奥深い情熱でした。

Rage Against The Machine の話をふると大喜びで「ねえねえ、どのアルバムが一番好き?私は1枚目と最新作なんですけど。」
そして「Carl Perkins と Johnny Cash が来たときにはもう大興奮!スタジオの横からキャーキャー言いながら見てたんですよ。」
極めつけには「TP&HB の Hollywood Bowl 見たの?私も見たけど、本当に最高でしたよねー!」

このような会話から、Shivaun の熱い気持ちが伝わってきませんか。そんな彼女が創り出す暖かい空間。それを享受するアーティスト達が生み出す最高の音楽。スタジオの外まで出て手を振り送ってくれた Shivaun、本当にありがとうございました。

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